ラボラトリーに生まれるドラマ @ 30ツリー
5月から毎月1回、5回シリーズで異なる企業から集まった新入社員を対象に、合同で研修を行っています。経済産業省が主催する研修で、JIELは全5回のファシリテーターをチームで担当。ラボラトリー方式の体験学習をベースに、受講者一人ひとりが自分の仕事と会社を知り、自らの言葉で自分の仕事と会社を語れるようになることを目指します。
既に終った第1回の研修では、共に学びあう関係づくりを行いながら、体験からの学び方をレクチャーしました。メインの実習としては、新聞紙でタワーをつくり、その高さと安定性、プレゼンテーションにより審査を行い、最優秀タワーを決定する「タワービルディング」を行いました。
その「タワービルディング」を行ったときには、計画段階から詳細な設計図を描き始めたチームもあれば、土台を安定させるためにマジックをそのまま素材としてタワーに組み入れることを計画したものの、組み立て段階で正統な用途以外の物品の使用方法を禁止されて計画が白紙に戻ったチームもあり、チームごとにさまざまな経緯がありました。しかし、完成時には6グループ中3チームのタワーが天井に届くほどの高さになり、そのうちの1チームが前述の組立て段階で計画が白紙に戻ったチームだったことに、私は人知れず感動を覚えました。土壇場になってもあきらめない気持ちがあれば、予想外の力を発揮できることもある。限られた時間で行う室内での体験学習のなかにも、多くのドラマがあります。
高く伸びるタワーをつくろうとしたのに、ヘナッと支柱が折れてしまったチームもありました。そのチームは高さがなくても先端に星のオブジェをつけて、「これはみんなの願いをかなえる流れ星です。さぉ、一番かなえたいことをお祈りしてください」とプレゼンテーションして、拍手を浴びました。その他にも「罪と罰」という一風変わった名前のタワーなど、さまざまなタワーが誕生。つい数ヶ月前までは学生だった各社の新入社員のみなさんが、会社の壁を超えて同期として協力した過程には、工夫とユーモアがあふれていて、ファシリテーターの私たちも勇気づけられました。
この実習「タワービルディング」で最優秀タワーに選ばれたチームのタワー名は、そのまま研修の名称にすることを当初から受講者のみなさんに約束していました。最優秀タワーに選ばれたのは「30ツリー」というタワー。「30名の受講者がすくすく成長していけますように」という願いがこめられた名称です。このタワーを生み出したチームにもドラマがありました。計画段階から詳細な設計図を描いたメンバーもいれば、それについていけず、とまどったメンバーもいた。けれど、製作段階の手作業を通じて、そのバラバラだったチームがひとつになっていったのです。
次回の30ツリーはいよいよ自分の仕事と会社を語れるようになるための一歩を踏み出す研修内容に入ります。今度はどんなドラマを体験できる研修になるでしょうか。彼らと共につくる研修の場を楽しみにして、当日に臨みたいと思います。