自己と他者

【自分に気づくことの大切さ】
「自己覚知」という言葉があります。
自身の感情や思考、価値観、ニーズに気づくこと、つまりプロセスに気づくことは「自己覚知」ができている状態だといえます。それはNVCを体系化したマーシャル・ローゼンバーグの言葉でいえば、「自己共感」ができている状態ということです。

ソーシャルワーカー養成教育に取り組むなかで「自己覚知」の大切さを私は実感しています。また、マーシャル・ローゼンバーグのNVCの実践をめざす者として「自己共感」の大切さも実感しています。

それは他者の感情や思考に巻き込まれず、自分が大切にしたいことを大切にするために不可欠です。自分自身が自らのニーズに気づいていれば、必要とするものを相手にわかりやすくリクエストすることも可能になります。自己の世界と他者の世界は同一ではありません。けれど、それを自覚することによって、初めて自分も他者も尊重することが実現可能になります。

【「他者化」と「他者共感」の違い】
一方で、新自由主義の台頭とともに幅を利かせる「自己責任論」は、そのときの困難がたとえ偶然背負わされた状況であったり、偶然担った役割だったりに由来していたとしても、その人個人の責任に帰してしまうものです。「それは自己責任だよね」と言うとき、本人以外の人々はその人の困難を「他者化」しています。

この「他者化」は、自己と他者の区別とは次元の違うものです。「自己責任」という前提があるからこそ、「他者化」することで自分には関係ないことになるわけです。

例えば何人かで話していて急に機嫌が悪くなった人がいた場合に、「あの人は発達障害だから」とラベリングして、その人の障害を機嫌の悪さの原因とみなしたとします。それは、一緒に話していた人がそのときの発言や話題などの影響は考えず、簡単に「他者化」してしまう発言ともいえます。

人は常に他者や状況の影響を受けながら生きています。その人の機嫌の悪さを察知したのであれば、共にいる人はその人を分断するのではなく、その人の感情やニーズに関心をもって問いかけることが可能です。もしかしたら、勇気がいるかもしれませんが、そうした問いかけはマーシャル・ローゼンバーグがいう「他者共感」の過程であり、他者のプロセスに気づくための一歩になります。

「他者化」して切り離す行為の対極にある、他者とつながるための行為だといえるでしょう。

【自己と他者を区別する】
既に述べた通り、自己と他者を区別することで、自分には他者とは違う自分なりの世界があることを自覚できます。それにより、他者にはわからない自分の感情や考え、ニーズを自分自身が言葉で表現して伝える必要性に気づくことができます。

同様に、他者には自分の知らない世界があります。だからこそ、他者の世界を大切にするためには、他者の内面を知るための問いかけや言葉のやりとりが必要になります。

【共感でつながるアサーション】
JIEL公開講座 第6回「共感でつながるアサーション」は、自己と他者の異なる世界をつなぐコミュニケーションの方法、NVC(Nonviolent Communication)を探求する2日間の講座です。

第6回を迎える今回は、2日間の間に1週間の日常を取り入れて1日ずつ開催します。自らの日常をラボラトリーにして、どんな実践ができるか。それも楽しみなチャレンジになりそうです。

★第6回「共感でつながるアサーション」

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