『急に具合が悪くなる』を読んで

 JIEL主催のナラティヴ・コル(https://jiel.jp/seminar-list/kouza22/15331/)にずっと参加しています。そこで顔なじみになったほんちゃんから、『急に具合が悪くなる』という本を読んだという話を聞きました。ナラティヴ・コルでは、White, M.の『ナラティヴ実践地図』の読書会を行っていて、その場で聞いたこと、さらにはほんちゃんが「この本で読んだことが『急に具合が悪くなる』の内容と重なる」と言っていたことから、私もぜひ『急に具合が悪くなる』を読んでみたいと思っていました。
 実際に読んでみると、言葉のやりとりのなかで人は「言葉が規定するような人」になっていくものだということや、配慮ある専門職の言葉がいかに強い規定力をもつか、さらには専門職でも何でもない人たちの良識ある言葉がけが規範を生み出すことが現実に即して具体的に述べられています。
 また、激動の後半になると、私が年末年始に読んだ中動態に関わるようなことも出てきて、結構夢中になり、あっという間に読み終えました。自己決定とは、自己選択とは、生きるとは何なのか。自分の講座「共感でつながるアサーション」(https://jiel.jp/seminar-list/kouza07/15108/)では、自分で選ぶことの大切さを熱く語る私ですが、当然のことながらその選択は果たして自分ならではのものなのかどうかを探究しはじめると、いろいろな解釈ができます。そこは忘れないようにしないとなと改めて思いました。
 哲学者 宮野真生子さんと人類学者 磯野真穂さんの往復書簡である『急に具合が悪くなる』は、琴線に触れることが多く、触発される本です。