リコール

 車を運転しながらラジオを聞いていました。定年を迎えた元・会社員が司会者の質問に応えています。
 「会社で働いているときは、自分の気持ちなど表すことなど許されませんでした。だから、今自分の気持ちを聞かれてもわからないんですよね」
 トヨタがリコール問題で揺れています。記者団に対して常務が「品質には問題はないが、お客様との感覚のずれがあった」と述べていました。
 客が運転していておかしいと感じても、車の機能としては問題ない、だからリコールにはしなかった、ということです。トヨタは車の品質には自信があったのでしょうが、そこに客を見ていない、そう受け止められます。
 トヨタのこの発表は、今の日本の、とくに企業という組織の特徴を鮮明に表しているのではないかという気がしてなりません。企業が扱うもののほとんどは、直接的であれ間接的であれ“人”を対象としています。“人”はいろいろなニーズをもっている。そこで企業はそのニーズに合った商品・サービスを開発し、商品化する。
 そして、“人”は感情の生き物である。
 企業はCS(顧客満足)を満たそうとしますが、“人”が満足するというのは、その人が満たされるときに感ずるその人の感情ではないでしょうか。
 ところが実態は、組織のなかで自分の気持ちをわからないものにせざるを得ない人が商品やサービスをつくるのです。そうしてできた財が“人”の心をどうやって打つことができるのだろうか。まさに“人”と組織に感覚のずれがある、そんなことを感じた今回の事件です。