続いています
6月から「天声人語」の書き写しを始めた。天声人語といえば言わずと知れた朝日新聞の朝刊に掲載されているコラムである。大学受験に出題されることが多く、私も高校時代には天声人語の要約をしたものだ。今でも天声人語は朝必ず読む箇所の1つである。5月の連休に「天声人語書き写しノート」なるものの存在を知った。私は自分がふと思い立って何かを始めることが多く、それがまったく続かないことを自覚しているので、ノートを購入したって1週間もたたずに飽きてしまうだろう…と思ってみたり、慣れ親しんだ天声人語だから今回こそは継続できるかもしれない…と思ってみたり、1ヶ月間葛藤をした挙句、6月3日に販売店に電話した。(朝日新聞の販売店で取り扱っている)実はこの書き写しノートが思いのほか好評だそうで、注文しても手元に届くまでには2週間くらいかかるという話を聞いていた。今電話したって始めるのは7月になるなぁと勝手に思っていたのだが、あっさり「3冊ね、明日ポストに入れておくよ」と言われたときには動揺した。注文の電話をしておきながら動揺するのは変であるが、「なんだ明日から始められるんだ」と思うとやる気が半減した。いかんいかん1ヶ月悩んだ意味がない、と思い直した。
実際ノートを手にしてみると少しわくわくした。A4版で1日見開き2ページを使用する。天声人語と同じ行数、文字数になっていて、メモ欄もあり、そこには感想を書いたりわからないことばを調べ書きとめておくこともできる。シンプルだけどスグレモノだ。1文字1文字ていねいに埋めていくと、25分はかかる。その間、実にいろいろなことを考えながら書いていることに気づいた。原発のことや管内閣のこと、東日本大震災のこと、社会で起こっていることがタイムリーに論評者の考えを通して見えてくる。しかし、論評者の考えをそのまま鵜呑みにせず、自分はどう考えるか、自分だったらどうするか、の視点で考える。朝早く起きたときやまた寝る前のひとときを使って、その日をふりかえるにもいい時間になった。
これはなかなかいいぞと思うと誰かにオススメしたくなるもので、私の職場である専門学校の学生に授業時ノートを紹介した。「字を書く練習になるし、表現力や文章のリズムが身につくし、社会で起きていることも分かるよ」と。しかしクラスの半分以上の学生が新聞購読をしていないことがわかった。確かに携帯やパソコンがあれば、新聞なんてかさばるし読むのもめんどくさいのかもしれない。自分には必要ないと判断するものわからないでもない。若者の活字離れの現状を目の当たりに感じた。しかし、これはチャンスかもしれないと思った。ノートをコピーして、一部の学生を誘って放課後に書き写しを始めた。といっても週1回のペースなので、大して役に立たないかもしれないが、それでも5.6人の学生は付き合ってくれる。集中すれば30分程度で終わるはずなのに、書き写しながら学生時代の話やらバイトのこと、将来のことなどを思いのまま話をするのでなかなか終わらない。書き写しが終わっても天声人語の内容にふれながら、気づいたことや感じたことを語り合う。気がつけば19時なんてことも…そんな時間も大切だなとしみじみ思う。
今月で2冊目に突入。またノートを発注しなくては…