「共感的理解」を力にする
昨日、JIEL公開講座「実践人間関係づくりファシリテーション 第6章 受け容れる」を行いました。この講座は、JIELの本「実践人間関係づくりファシリテーション」を章ごとに執筆者がファシリテーターを務めて紹介するシリーズです。昨日は春の講座で今年は秋にも開講しますので、よろしければチェックしてみてください。
本をご覧いただくとわかりますが、私は担当章の小講義「受け容れるとは」の「受容と共感的理解」というところで、ロジャースの「カウンセラーの基本的態度」である次の3点を挙げて、自分や他者を受け容れ、それを表明する過程を紹介しています。
1.受容(無条件の肯定的配慮) 2.共感的理解 3.自己一致
この3点は、自分とは異なるさまざまな人が生きる社会で、消耗したり、燃え尽きたりすることなく健康に生きるために必要なプロセスであると同時に、人それぞれの気持ちや考え(多様性)を大切にして生きるために不可欠なことだといえます。
ラボラトリー方式の体験学習で合意形成(コンセンサス)の実習を行うと、時間までに結論を出すということがいつのまにか忘れ去られ、話し合いのなかでお互いの意見を聴きあうことに夢中になることがあります。聴きあう姿勢で話しあっていれば、受容の風土が最初からグループにあり、共感的理解がたくさん得られます。人は誰でも「わかってほしい」、「わかりたい」という気持ちをもっているものなので、日常では見逃しがちなそんな欲求が満たされるひとときは、誰にとっても心地よいのです。
コンセンサス実習自体が一人ひとりの意見の違いを可視化した上で、グループで合意形成を図っていく手順を設けているため、ロジャースの上記3点を試みやすい状況になっていることも、心地よさを得やすい一因だといえましょう。しかしながら、ラボラトリー方式の体験学習はレクリエーションではなく、行動変容をめざす学習方法です。時間の制限がある日常で実践できる望ましい行動の獲得をめざすのであれば、実習に取り組む際も決められた制限時間のなかで、いかに成果を上げられるか、考えられる行動を試みてみるといいでしょう。
「共感的理解」を心地よく感じて、それを堪能することから得られる自分やグループへの信頼感があるとしたら、次はそれをいかに一人ひとりのエンジンにして、グループで成果を上げる道へつないでいくか。現実的でちょっとわくわくする課題です。「共感的理解」はきっと個人やグループの力になるはず。心地よさの一歩先にある難しさとも向き合うことで、 エクササイズで結果を出し、手応えのある満足感を得る道が開けてきそうです。