実践 人間関係づくりファシリテーション
昨年末、私たち日本体験学習研究所の研究員がみんなで書いた本、「実践 人間関係づくりファシリテーション」が刊行されました。
http://www.kanekoshobo.co.jp/np/isbn/9784760826476/
この本は、1)心理学や教育学、人間関係論等に詳しくない人でも自らの日常に照らし合わせて読み進むことができる、2)ファシリテーターとして自分で学びの場をつくろうとする人が、ポイントを押さえて小講義とラボラトリー方式による体験学習のエクササイズを提供できる、という2大特長を備えていて、すべての章が次のような構成になっています。
1.具体的な事例を挙げた問いかけの導入「あなたならどうしますか?」
2.テーマについての小講義
3.実際に活用できる体験学習のエクササイズ
4.エクササイズを行ったあとのファシリテーターのコメント参考例
5.章のまとめの小講義
6.ファシリテーションを行う上でのテーマの重要性
例えば、私が担当した第6章「受け容れる」の場合、1の導入部分では、A)社員同士が挨拶さえしない企業で働く社員の事例、B)シャツにアイロンをかけた母親に対する息子の応答を挙げ、読者に自分ならどうするかを問いかけています。2の小講義「受け容れるとは」では、A)を受けて挨拶という行動がもつ受容の機能を、B)を受けて立場の違いを超えて相手を受容するために必要な行動を紹介し、その上でロジャーズによるカウンセラーの基本的態度「受容/共感的理解/自己一致」の3点を挙げて、受容と共感的理解の必要性を述べました。3のエクササイズは、そこまでに述べたことを実際に体験できるように合意形成の実習を紹介しています。4は3の実習を終えた学習者に、ファシリテーターが実習を行った意味や実習で起こりがちな現象を解説し、内省を促すコメントです。5ではそれまでの学びや気づきをさらに一般化し、自己受容と他者受容により自分自身の感情や認知、お互いの関係性が変容していくことを具体的な事例を挙げて述べました。6はファシリテーターを務める際に、目の前の学習者や自分自身の言動、そしてその場の状況を受け容れることの大切さを紹介しています。2と5の小講義は、私が公開講座で行う「アサーション・トレーニング」にも通じる重要な考え方であり、6のファシリテーターとしての心得は私自身にとっても大切な教訓です。
こうした流れで各章が書かれている「実践 人間関係づくりファシリテーション」は、そのまま学びの場に活用できる、まさに実践的な本です。多くのみなさんにお役立ていただけるとうれしいし、2014年度はこの本に基づいたJIEL公開講座の開催も予定していますので、ぜひ楽しみにしていてください。