不東

 不東。

 今年の賀状は「不東」にしました。三蔵法師・玄奘のことばです。

 『大唐大慈恩寺三藏法師傳』には、三度、「不東」の文字が出てきます。ひとつ目は、玉門関の手前の草原で西域行きを止められたとき、二つ目は、玉門関の外にある狼煙台で捕まったとき、そして三つ目は、砂漠で水の入った皮袋を落として水を失い、十里ほど戻ったときの三度です。三つ目ではこういっています。

「自念我先發願。若不至天竺。終不東歸一歩。今何故來。寧可就西而死。豈歸東而生。」(私は先に願を立てた、もし天竺に至ることがなかったら、東には一歩でも帰らない、と。今なぜ戻っているのか。むしろ西に向いて死ぬべきだ。どうして東に帰って生きられようか。)

 三蔵法師は目的を達し、インドに赴き、学びます。

 でも、三蔵法師の目的は、インドに赴き、学ぶことではありません。「東」に戻り、自分がインドで学んだことを多くの人に伝えることです。

 まだまだ学びが浅く、すぐに東に戻ってしまう自分です。それでもなんとか身心脱落し、少しではあってもこの身で、この心でお役に立てられるよう西に向かって歩んでいきます。