OVT(On The Volanteer Training)
今、企業ではなく、NPOやNGO、LLP、LLCなどの法人格で事業を行う組織が増えてきています。既存の企業のような営利組織ではなく、非営利組織だったり、組織にかかわる人々との雇用関係が従来のようなピラミッド型ではなかったりと、法人の形態ごとにさまざまな特徴があります。
先日、Japan Dialog 1.0という対話の場が東京であり、そこには5人のゲストが登場し、自らの仕事についてストーリーテリングしました。私はこのJapan Dialog 1.0 のUstream映像をリアルタイムで名古屋で観る会場に参加し、5人の仕事のストーリーを聴き、他の参加者と感想をわかちあいました。いずれのゲストの仕事も現代を生きるヒントに富んだ発想から生まれていて、視聴しているだけでも刺激的でしたし、視聴後の感想を言語化することで「あ、そうか」と思う気づきもあり、サテライト会場とはいえ、参加して良かったと思っています。
そんなゲストのストーリーのなかで、TEDx Kidsという組織の青木さんが活動の基盤を説明するときに「OVT(On The Volanteer Training)」という表現を使ったことが印象的でした。企業の人材育成に携わる方ならピンとくると思いますが、OJT(On The Job Training)をもじった造語です。
TEDxとはアメリカで行われているホームパーティ風の対話の場で、そこにはビル・ゲイツをはじめとしたビジネスや文化の第一線に立つセレブが頻繁に参加しています。なぜ、そんな著名な人たちがTEDxに参加するかといえば、ジャンルを超えた人々が集まり、フランクに思いついたことを語り合える対話の場から、いくつもの先進的なアイデアが生まれているからだそうです。
そこで、青木さんたちはTEDxを日本で開催し、関心をもつ人たちと共に、先進的なアイデアが生まれる場をつくろうと考え、まずはTEDx TOKYOを開催。続いて青木さん自身がふたりのお子さんの父親であることから、子どもにもTEDxのような場を体験させてあげたいと思い、TEDx Kidsに取り組み始めたそうです。
そして、こうした日本でのTEDxの取り組みは、同様に「日本でTEDxを開催したい」とか「子どもにもTEDxを体験できるチャンスをつくりたい」と思う人が、自ら進んで運営に参加し、ボランティアとして推進しているというのです。これは、一般の企業では考えられないこと。事業活動を推進する社員とは雇用関係を結び、対価として報酬を支払うことが根幹を成す仕組みになっていますから。
しかしながら、TEDxでは前出の青木さんの言葉「OVT(On The Volanteer Training)」が象徴する通り、組織の事業活動そのものを「やりたい」と思う人が自発的にボランティアになって推進し、その取り組みの過程を自分自身のトレーニングにして、対価としては自らの成長や変革、あるいはやりがいや人脈などを手に入れていくそうです。これはスゴいと思いました。
震災以降、パラダイム・シフトという言葉がよく使われますが、震災とは関係のないところでも、世の中の枠組みは大きく転換しようとしています。考えてみれば、私たちの地元・名古屋にもこれからの地域づくりに必要な事業を行う非営利組織がいくつもあり、そうした組織の多くはボランティア主体で活動を推進しています。
こうした現状を改めて認識して、私たちの仕事や学習という概念は、今後大きく変化していく気がしました。その変化の過程には今までの捉え方や現状の勢力との葛藤もあるでしょうが、そうした移行的混乱期を乗り越えたとき、私たちは私たちが望ましいと思う生活を実現するために、本当に必要な仕事ができ、自分の関心に応じた活動を通して、実践的な学びやお互いのつながりを大切にしていけるのではないでしょうか。これからは私も自分のリソースの強化を図りながら、それを柔軟に活かせる場や機会はないか、アンテナを張って生きていきたいと思います。