中動態の世界を垣間みて
年末年始に気になっていた『中動態の世界 ―意志と責任の考古学』と『<責任>の生成 ―中動態と当事者研究』の2冊を通読しました。
きっと私が取り組んでいる「共感でつながるアサーション」におけるアサーションやマーシャル・B・ローゼンバーグによるNVC(Nonviolent Communication)の捉え方にもかかわるような新たな視点があるのではないかと考えてのことです。
著者である國分功一郎さん、そして『<責任>の生成 ―中動態と当事者研究』の対談相手であり共著者である熊谷晋一郎さんのダイナミックな論理展開とそれを支える発言の慎重さには、大いに学ぶところがありました。
『中動態の世界 ―意志と責任の考古学』は、専門誌「精神看護」に連載されていた記事をまとめたものだそうで、次章に入るたびに前章のポイントを再度述べる部分があり、慣れない哲学分野の本とはいえ、わかりやすく書かれていました。
ただ、「中動態って何?」と思って読む人が多いことと思いますが、後半にならないとそれに関する記述は出てこないので、國分さんの文体やそこに至るまでの論理展開を楽しむつもりで読むとよいでしょう。
『<責任>の生成 ―中動態と当事者研究』は、國分さんのわかりやすい説明に熊谷晋一郎さんの機転の利いた鋭い返しと解説が加わり、面白い本になっています。2冊の本を通読したのが適切で、『<責任>の生成 』まで読んでわかったことがいろいろありました。
また、当事者研究と類似点が多いのは「外在化」が技法の一つになっているナラティヴセラピーだと理解していましたが、当事者研究と中動態も大いに関連がある重要な認識なのだということが、熊谷さんの説明でよくわかりました。
「する・される」という「能動態・受動態」とは全く異なるパラダイムにある「中動態」の世界を垣間見て、マーシャル・B・ローゼンバーグのNVCに取り組む私としては、自己共感から始まる自らのニーズを満たすための行動は中動態であることに安心感を覚えました。中動態には関心を持っていきたいと思います。