青い鳥-2017年の思い
私自身が「幸せ」というものに引き寄せられたのは、1990年代のブラジルから戻ってきたころだったと思います。
大学を出て、会社に入り、社会人となってバブル期を経験しました。会社で働くさまざまな部署の人、ブラジルから出稼ぎでやってきた日系人、海外で出会った現地で働く日本人の姿や現地の人たちの生活などをみてきました。
会社を離れ、ブラジルで生活を始めました。駐在する者としてでなく、生活する者として生きる体験は、また違った視点と感覚を植えつけました。
インドでの長旅もそれに輪をかけるほど影響のあるものでした。自分のもつ常識がこうも覆され、一気に白髪が増えました。それでもインドとインド人に底知れず魅了されました。
自分のことで精一杯でした。自分のことしか考える器しかありませんでした。日本は豊かな国といわれますが、日本人で自分は幸せだと思う比率はどうもその豊かさに比例しているものではないようです。2011年の「一人当たりGDPと主観的幸福の国際比較」によれば、日本より幸福度が高い国はスイス、ドイツを始めナイジェリア、ガーナ、コロンビア、ウズベキスタンなどがあげられています(2011、世界幸福データベースおよびIMF資料)。
20世紀後半にマーチン・セリグマン博士を代表にポジティブ心理学が台頭し始めました。クーパーライダー教授らが創始したアプリシエイティブ・インクワイアリーは1987年に提唱されています。そのどちらにも表れてくるのは、ポジティブということばです。
チルチルミチルはおばあさんに頼まれて、青い鳥を探す旅に出かけます。いろいろな体験をしながら青い鳥を探しましたが、見つかりません。結局家に戻り、おばあさんに詫びます。そのおばあさんはもともとチルチルミチルの家にいた鳥を欲しがりました。その鳥は青くはなかったのですが、よくみるとチルチルミチルが旅に出る前よりずっと青くなっていることに気づきます。チルチルミチルはおばあさんに青い鳥をさしだし、それでおばあさんの娘はすっかり元気になります。
身の回りにあるもの、自分の身にふるかかってくること、それ自体は青くはないかもしれません。自分がそれを感じ、受け止め、受け容れ、青く消化していく、青く熟成させていく、そのプロセスと思考、そこで発現されることが自分の青さを深めていくことになるのではないか、と思います。
青い鳥は、こうしてお話を終えます。
「チルチルミチルは、幸福とは気がつかないだけで、身の回りに潜んでいるもの。しかも自分のためだけでなく、他人のために求めるとき、それははかりしれなく大きくなることを知ったのです」。