逆風満帆

昔、ヨットをやっていました。

ヨットといっても全長25フィートあるので、約7.5メートルの長さのクルーザーです。

ヨットは風に向かって進めません。吹いてくる風に対して左右45度の領域以外の範囲の中で風を受け、目的地に進みます。できるだけ多くの風を拾うようにセールの角度を変えたり、吹く風と同じ方向に進むときにはスピンというパラシュートのようなセールを上げたりします。

今どこで風が吹いているかを探すとともに、潮がどう流れているかを読む必要があります。最悪なのは風が凪いでいる時です。風がないとどこにも進めないので、潮に流されるままです。ヨットの中ではただただ動かないようにじっとしているしかありません。当時(!)は体重の重かった私は、ヨットの真ん中にいろ、そこから動くな、とよくいわれました。

 

こいのぼりの鯉も風がないとしなだれているしかありません。風があるからこそこいのぼりは泳ぐことができます。ヨットと違ってこいのぼりは風に向かって泳ぎます。風があるからこいのぼりは命を蘇らせます。その風は順風なのか逆風と呼ぶのか、いずれにしても風があることで生命が活気づきます。逆風と呼ぶとしても、逆風のときに“満帆”にすれば、進むことができる。こいのぼりを見て、そんなことを思いました。

 

鯉は滝を登り、やがて竜になったとされるめでたい魚です。こいのぼりの“のぼり”は“幟”ですが、鯉の滝“登り”にひっかけているのではないかな、と思います。