やもり
寝ようと思って、部屋の電気を点けた。壁になにやら得体のしれないものが…。ん?とかげ?でも、あのギラギラしたてかりがない。わかった、やもりだ。
やもりは害虫を食べてくれるので、「守宮」と書いたり、「家守」と書いたりする。でも、夜に突然顔を合わせると、こちらはあまりいい気がしない。
たぶん、あちらもいい気がしないのだろう、見ていると動かないのに、ちょっと目を離すと少し動いている。また目を離すと、別のところに。「だるまさんがころんだ」をしているよう。
ふとんに入り、寝ようとするが、なんだか寝つけない。「だるまさんがころんだ」をしているときはいいけれど、だるまさんが寝てしまった間にあいつが枕元にやってきて、耳たぶを噛んだらどうしよう、と思ってしまう。そうこうして朝がきたら、あいつはいなくなっていた。
夜になると、秋の虫が鳴く。その鳴き声のなかに、いつもの年にはきかないような「チッ、チッ、チッ」と鳴く声。あれはやもりが鳴いているのかな。どうにも無碍にして遊んだやらなかったから鳴いているのかな。
だるまさん 遊ばずに行き 床に行き 家守は見ずや 我が袖にす