時に海を見よ

 海を見るためだけに海に向かったのは、いつだったろうか。

 僕は、いつから海を見にいこうとはしていないだろうか。

 

 あれはもう、何十年も前のことになる、その日目覚めて北陸への向かったのは。

 

なぜ、北陸だったのか。なぜ、海に向かったのか。

そんなことはどうでもいい。どこの海でもない、北陸の海。それが僕を呼んだ。

 

海を見てちっぽけな自分を感じたとか、海を見て気もちが大きくなったとか、そんなことはどうでもいい。

 その時間が必要だった。その時間に海といることが必要だったのだ。

 

 「真理はあなたたちを自由にする」

 

 そこに真理はあるか。自分を解放する自由がそこにあるのか。

 

 「時に海を見よ」

 

 海がそこにある。僕がそこにいる。それだけ、それだけだ、それだけでいい。

 

 海を見る自由。

 

 海を見る自由を忘れてしまっている。

 

 海に行こう。海に会うために、海に。