対話

 Aさんは会社を辞めました。
 その理由ははっきりとはしませんが、Aさんが会社の現状に触れ、その問題点を挙げ、改革を促した、それが上司には承服しかねることだった、そんな背景があったようです。
 上司にしてみれば、相応の条件と待遇を提供しているのに、会社への貢献に見合わず、その上に会社に対して文句をいうとはなにごとだ、といった少々感情に走った嫌いもあったのではと聞きました。
 会社の上司とその部下というひとつの組織のなかでの立場の違う人と人とのやりとりが、最終的には物別れに終わり、離れていく。上下の関係に限らず、私たちの日常の生活ではそれぞれの価値観のぶつかり合いが思わぬ事態を引き起こすこともあります。大きくいえば戦争もその類といってもいいでしょう。
 「対話」。私たちが生きるこの社会では、まったく同じ人はいない。一方がその立場や権威、権力で説き伏せ、他方が説き伏せられるか、あるいは決裂、決別するか。そうではなく私たちにできることは、互いに向き合い、とことん話し合う場を持つことしかないのではないかと思います。
 そして思うのは、その話し合いの場でまず前提となるのは、私たちが双方の言うことを受け止めようとする、理解しようと努める、互いの思いや気持ちを大切にする、そのことがあってこその「対話」なのだろうということです。
 「人間の尊厳」
 多様性が認められ、受け入れられる社会を創成していく、そこにまず守られるもの、それを胸に刻みつけて歩んでいきたいです。