明るい未来
精神保健福祉士養成の援助技術の教科書には、たいてい「ストレングスアプローチ」というものが載っている。これがチャーズルAラップという人が提唱したソーシャルワークアプローチである。その著書『ストレングスモデル』では、「すべての人は目標や才能や自信を有しており、またすべての環境には、資源や人材や機会が内在していると見る」さらに「問題よりは可能性を、強制ではなく選択を、病気よりむしろ健康を見るようにする」と述べている。そして、この考え方はいまやソーシャルワーカーの価値観の1つとなっている。
しかし、私はいつも疑問に思っている。ソーシャルワーカーは当事者のストレングスを信じ、支援しようというのに、ワーカー自身は自分のストレングスを信じているのだろうか?少なくとも私は1つの理論としてストレングスアプローチを学んだが、自分のストレングスを認め促進していく方法は全く学んでいない。教科書にも書かれていない。自分をポジティブにとらえる視点はどうしたら獲得できるのかなぁと模索していた。そんなとき、AIアプローチに出会った。
先日、AIアプローチで行う「ハイポイントインタビュー」を授業で実施した。「イキイキした、キラキラした自分を見つけられるかな?」「私たちはそんな宝物をもっていて、そんな私たちに何ができるんだろう?」そんな問いかけをしながら、インタビューに取り組んでもらった。もしかしたら課題にのりきれない学生もいるかもしれないと危惧していたのは最初だけで、難しいね〜と言いつつも、実にイキイキと自分自身を語りだした。1人30分ずつ60分では足りずに20分延長したほどだ。
その後、数人でわかちあった後、全体でわかちあいをし、4人の学生が語ってくれた。そのうちの1人が精神保健福祉士になった未来の自分を想像して飛び込んできたニュースのタイトルを「精神障害者初の総理大臣」と語った。日本国民全員が障害者という概念さえ持たなくなるやさしい世界をつくりたいと…。彼らが語る言葉を聞きながら、私が想像している以上に学生たちはこの日本をなんとかしたい、自分が変えていきたいと思っているのかもしれないと、心が躍るようなワクワクした気分になった。思わず「私も仲間に入れてね」と言ってしまった。
こんな精神保健福祉士たちがいたら、明るい未来が待っているかもしれない。彼らと一緒にワクワクしながら、そのために何ができるかを考えていきたいと思う。