ファシリテーターと司会の違い
先週も様子を書きましたが、今、名古屋市女性会館のなごや女性カレッジにて「体感!ファシリテーション」という5回シリーズの講座を研究員の岸田さんとともに担当しています。私たちが定義するファシリテーターとは、体験からの学びを援助・促進する人であり、援助・促進のためにメンバーやグループのプロセスに働きかけます。これは講座の1回目から何度も説明してきたことですが、概念的に理解することはできても、実際にどんなことなのかはやってみないと、なかなかわかりません。
そこで、昨日はグループごとにファシリテーター、司会、タイムキーパーの役割を決めて合意形成の実習にチャレンジしてもらいました。すると、役割決めの段階で「ファシリテーターと司会は違うんですか?」と質問してくれた方がいました、重要なポイントです。一般的には司会・進行とファシリテーターを兼ねる場合が多くありますが、両方やりながらプロセスに働きかけるのは結構高度です。時にはグループや個々人のプロセスよりも、課題達成に向けてとにかく進めたくなることもあるでしょう。そんなとき、司会とファシリテーターの役割が別々であれば、司会の進め方が速すぎると感じたときは、メンバーに「先に進んで大丈夫ですか?」と確認するなど、実際に働きかけることができます。
つまり、コンテントの成果(課題達成)のために、課題の進め方を考えていくのが司会の主な仕事であり、その過程で起こるさまざまなメンバー間の言動に注目し、見えない感情や思考(プロセス)を問いかけによって明らかにしながら、前へ進む意欲や積極的になれるような安心感を引き出していくのがファシリテーターの主な仕事です。それぞれ関連していますが、重点のおき場所が違います。
司会・進行とファシリテーターを兼ねる場合は、その場のメンバーの様子を見てプロセスに働きかけるために、進行のアプローチを変えることもあるでしょう。しかし、講座では負担が大きくなりがちな司会・進行は一旦別の人に預けて、ファシリテーター役には実際にプロセスを観て、働きかけることにチャレンジしてほしいと考えています。
こうしたファシリテーターと司会の違いは実習やふりかえり、わかちあいの終了後も話題になり、多くの方が関心を持っていました。その際に「やっぱり、よくわからない」と言っていた方に、別のグループでファシリテーター役を担当した方が、自分はどんなふうにファシリテーターとしての仕事をしたかを具体的に話して、最後に「これは司会とは全く違った視点で、司会ではできない言葉がけだったと思います」と発言してくれた内容は、わかりやすく印象的でした。今ここでの体験から生まれた気づきや学びには力があると思いました。こうしたお互いに学び合える関係性を大切にして、最終回の次回に臨みます。