実践の場での体験学習の循環過程

毎月7日にJIEL研究員のブログを書くことが、私の役割なのだが、先月は書く時間をどうしてもつくることができなかった。一ヵ月たち、状況は変わっているのだが、今月はまた違った忙しさに見舞われている。新しい分野の仕事を受けたことがその原因だ。
フリーのプランナー・ライターを始めて22年。いつのまにか、「こういう仕事はこうやるものでしょ」というようなスタンダードな自分のやり方ができていて、あまりムダなく仕事を進めるようになっていた。けれど、今回は自分にとっては新しい分野の仕事。いつものやり方では通用しない面があり、スタッフ間の対話が必要不可欠だ。自分ですべて企画して、デザイナーやフォトグラファーに指示すればいいというものではない。仕事を進めるなかでそれがわかってきて、大変ながらも、私は「2011年の最後に良い仕事に巡り会えた」と思った。仕事そのものが、体験学習になるのである。知らないことは「これって何ですか?」ときき、教えてもらう。良いアイデアが出てきたら、「それ、すごくいい!」と喜ぶ。他者からの指摘は真剣にきいて、少しでもその分野のエキスパートに近づけるよう、分析、仮説化を経て「これからはこうする」と宣言したり、「いっしょにこうしましょう」と呼びかけたりする。まさに実践の場で、体験学習の循環過程のサイクルをまわしている実感がある。今ひとつ思うようにコミュニケーションがとれなかった頃は、正直なところ、困ったなと思ったのだが、次第に言いたいことが言えるようになってくると、自分の見方が変わってくる。本当に人間関係は大切だ。
仕事は収入を得るために行うものだけれど、それがすべてではない。忙しいと効率を追求しがちだが、効率を追求することは経済優先の社会の扉をひらくことにもつながっていく。村上春樹さんのエルサレム賞受賞スピーチをきいてから、そういう思いが強くなった。かといって、のんびりしているわけにはいかないのだが、働くことで人に役立つ価値を生み出すとともに、そのプロセスから学び、さらにより良い仕事ができるように努力する姿勢を持ち続けていたいと思う。