人と人との接点
人は価値観も違えば、考え方も違い、事実の認識の仕方もそれぞれ。
それはわかってはいるが、何年もの間、うつ病を患ったという方の話を伺っていて、「ご家族はどんなふうに接してましたか?」と尋ねたところ、「いや、カミサンは知らなかったって言うんですよ」という言葉が返ってきて驚いた。元気なときは飛び回っていて、夜中や休日も家にいないことが当たり前になっていたそうで、そういう日々を共に送ってきたパートナーは「元気のないときはいつも家にいて、うれしかった」と言ったというのである。驚いただけでなく、感動した。相手はきっと元気になると信じているから、今ここにいる事実のほうがうれしかったということだろう。大変力強い無条件の肯定である。そんな人が近くにいたら、元気になるのが当たり前だ。ん?
グッと若い20代の女性は、ずっとメイクが好きだったというだけあって、明らかにわかるつけまつげでゆっくりとまばたく。その様子が優雅で、あまり慌ただしさを感じさせないことが、周囲に好影響をもたらしている。ところが実際の彼女の仕事は、次々にやることが生まれる人的集約産業で、職場では誰もが慌ただしく動いている。しかし、そうした忙しさの中、彼女は手際よく仕事をこなしながらも、部下のちょっとした仕事の上達や気遣いに敏感に反応し、歓喜の声を上げる。そのせいか、彼女の部下は意欲が高く、チームワークもいいと評判だ。「私は本気でみんなを信じているから、みんなも本気で応えてくれるんです」。なるほど、信じる気持ちは人の意欲を引き出すもののようだ。