ISO26000と合意形成
ISOといえば、企業・組織の健全性を証明するためによく取り上げられる国際標準化機構が定めた世界標準の規格です。品質管理マネジメント規格のISO9000や環境マネジメント規格のISO14000は、多くの企業の玄関にその認証が飾られています。
昨日、そんなISOの中でもまだ耳なじみの薄いISO26000の勉強会に参加しました。ISO26000とは組織の社会的責任についてのガイドライン規格で、昨年11月に発行されたばかりです。
持続可能な社会を実現するには、企業によるCSRの実践だけでは難しく、企業に加えて学校、各種団体、組合、NPO・NGO等、世界のマルチステークホルダーによる対話と合意のもとにISO26000が誕生しました。そして、今は世界中のマルチステークホルダーがそれを遵守することを視野に入れ、普及を進めています。
ただ、数値による基準や合理的判断が可能なISO9000やISO14000と違い、ISO26000は数値にはしづらい組織統治、人権、労働慣行、コミュニティ参画等の中核主題を取り扱っているため、達成度を客観的に判断するのは難しいという特徴があります。そのため、認証は行わず、あくまでも組織が社会的責任を考えるうえでのガイドライン(手引き)として活用されています。
こうしたISO26000の規格概要をきき、話し合う過程で、私は文化や環境、そこにいる人々の関係性が全く異なる世界各国の組織の人々が、お互いの願いや要望を踏まえて、みんなが合意できる世界標準の「基準」を導き出したことの素晴らしさを知りました。
そこには、ラボラトリー方式の体験学習に携わる私たちが、多数決や人任せの決定ではなく、コンセンサス(合意形成)による決定を大切にするのと同じスピリットがあります。ISO26000の人権に関するガイドラインは、世界人権宣言に準拠しており、それは力の強い国や組織の意向で決まるのではなく、言葉の一つひとつにもこだわって、全員の合意の上で決められたというのです。
文化や宗教によって何が正義で何が悪かさえ、一変してしまうこの世の中で、世界人権宣言に綴られている言葉の一つひとつがISO26000とともに、本当に世界中の組織で守られるようになるといい。人と人が向かい合い、話し合い、つながることをあきらめない限り、そんな願いは実現する可能性があります。