ESDスペシャリスト育成講座-第2回の学び

 8月6日に最初に登壇されたのは水谷央さんです。水谷さんは現在NPO法人 もりの学舎自然学校の代表理事を務め、もりの学舎を中心として愛知県内各地で主にインタープリターとして活動しています。
 「子どもたちが、多様な可能性を見つけることができる社会の形成」、「子どもたちが、自分で感じ、考えて、実現できる力を身につける」、「子どもたちが「力」を身につけるためのサポートができる大人を育成する」
 「自然はツール」という水谷さんや水谷さんのお仲間たちの思いは、自然とともに、自然を活かして、私たちと、私たちの子どもたち、私たちの未来とどう関係をつくり、どう描き、どう創造していくか、という深淵なものをもち、でも実際の行動は身近にある自然とのふれあいにある、ということを感じました。

 

 次に話をされたのは山田俊行さんです。トヨタ白川郷自然學校の學校長で、白川郷からプラグイン・ハイブリッド車で来られました。トヨタの名前から想像できるように、トヨタのCSR=Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の姿勢が形で表れているものです。商品をただ売りさえすればいいというのではなく、売った先のこと、売る前のことを考える、そのことが企業の思想に影響を与え、そのものの存在と継続にも影響を与える。北海道の昆布漁師が昆布の取れる量が少なくなったとき、山に入り、山を育てる活動をした話を思い出しました。この世の中は大きく循環しているとすれば、人も、自然も、企業も共に育ち、共に生きる、共育と共生をどうしていくか、自然と時間とをあわせたコンセンサスが大切と感じました。

 

 3人目は西村仁志さんです。広島修道大学人間環境学部の教授をされていて、今回の話は公害教育です。日本の経済を牽引した企業は負の遺産も残しました。4大公害ばかりでなく、日本各地で企業活動が優先され、そこから排出されるものに目が届かない実情がありました。今や公害ということばもおそらく子どもたちにとっては新鮮な響きをもつかもしれないほど対策がとられ、西村さんの話によれば原因企業も含めた地域での集まりや話し合いもされているとのことです。

 

 東日本大震災で多くの町が損壊しました。津波に飲まれた建物を震災遺構として残すかどうかの話し合いがされていると聞きます。家族や友人をなくされた方にとっては見るだけでつらい思いをされることと思います。ただ、語り部の皆さんも歳を取ります。今の子どもたちにとってスマホはあって当たり前であり、ゲームを遊び、ラインを使うことも自然なことです。それはいいかえれば、以前はあったけれど今はない、ということも当たり前のこと、自然なことということでしょう。公害も今となってはなんの話?と子どもたちに思えてしまうのも仕方のないことかもしれません。

 

 3人のお話を聞いて思ったことがあります。ESDはEducation for Sustainable Development(持続可能な開発のための教育)です。持続するということ、そのなかには失われたもの、埋もれたものでそれを未来につなげていく、引き継いでいく、そこには人が、人として、他の人とどう生きていくか、未来の人にもつながる核となるものとそれをつなげていく責任が私たちにあるのではないか、ということです。

 

 話を聞いて感じたのは、3人ともESDとは、といったことが念頭にあって、それだから活動をしているというわけではなく、ご自身の興味や関心、好きなことにかかわり、取り組んで、ひいてはそれが教育に結びついている。郡上からトヨタ白川郷自然學校までのロング・トレイルを計画・整備中という話がでて、それに行ってみたいという声が聞こえたとき、そうやって自分たちがやる、楽しむ、その体験を話す、伝える、そうしたこともESDの広まりにつながるんだな、と感じました。