霜月-1年の剪定

 植え木の剪定に来てもらいました。といっても専門の業者、というのではなく、ここ数年シルバー人材センターから派遣されてくる人に頼んでいます。
 剪定というものはどうやって値段が決まるのかわからずじまいで、業者のいいなりのようなところがありました。3年前、なにかの拍子でシルバー人材センターに電話を入れたら何日か後に家にやってきました。見積もりを出す、とのことです。
 話を聞くと、木の本数や種類によって値段が異なるそうで、その場で見積もってくれました。値段としては手頃ということもありますが、見積もりの積算がわかることが安心につながります。
 例年は2人で来るところですが、今年は都合がつかないみたいで1人で来ました。話をすると高校の先輩であることがわかり、そんなこともあってこの3年はその先輩がやってきます。
 彼はなかなかおもしろい経歴の持ち主です。教育系の大学に行き、教員になりました。5年経ったころ、今でいうモンスター・ペアレントとやりあい、退職。その後、大手メーカーに奉職し、定年まで勤め上げる。定年後に職業訓練校に入り(授業料は無料)、剪定の勉強をし、今に至る、ということです。
 経済的に困っているので働き続けている、という印象をもちません。おそらく庭いじりが好きで、身体を動かすことを厭わない、収入は二の次、という印象です。だからといって手を抜いているようには見受けられないし、手際よく庭に生えた草も抜いていってくれます。そして「ここは1月ころになったら根にカリウムの入った肥料をやったほうがいい」とかアドバイスをしてくれます。伸びすぎたガクアジサイも芽を残して適度にカットしてくれました。

 

 小さい庭ですが、1年も経てば枝は伸びる、葉は茂る、草は生える、と見た目も雑な感じを受けます。たぶん自分の心も1年経ってあちこちにほつれや雑さが現れていることだろうと思います。どこの部分を、どこまで、どのように剪定するか、自分自身に鋏を入れることはなかなかむずかしいことです。雑は雑であってもそれなりに味があるともいえそうですが、荒れていてそれに気づいておらず、麻痺でもしているとすると、心はすさみ、病んでいくような気がします。
 これから年末に向けて寒さが深まっていきます。寒くなるほど鋏をもつ手も鈍くなる。でも、ちょうどこの時期に剪定をするのは、冬を迎え、寒さに耐え、それを力に変え、春につなげるための準備なのかもしれません。