お福分け

 いつの頃からだったか忘れました。たまたまチャンネルをいじって出てきたのが、その番組でした。それは、再放送だったので、おそらくだいぶ前から放送されていたものだと思います。

 イギリス人の、自然とともに生活する姿を描いた番組です。イギリスの高貴な家に生まれた彼女は、その生活に疑問をもち、イギリスの地を離れます。インドなどを訪れた後、日本に辿り着き、現在は京都の大原で暮らしています。番組は、彼女の日々の生活をそのまま映します。築百年以上にもなる古民家の庭でさまざまなハーブを育て、そのハープを使って料理をつくったり、化粧品や防虫剤、風邪の予防薬もこしらえます。大原に流れる空気とともに、彼女のエッセイがところどころ、彼女の英語の朗読で読まれます。彼女の生活観、人生観がそのやさしいことばのなかにちりばめられ、輝きます。

 ベニシア・スタンリー・スミス(Venetia Stanley-Smith)さん。「猫のしっぽ カエルの手」。評判がよかったのか、大原のご自宅まで訪れる人が増え、それがきっかけかなのか知りませんが、2013年に放送は終了しました。

 私が彼女と出会ったのは、ついこの間です。その時が、私が出会う時だったのだろうと思います。

 「自分に与えられたものを楽しめることが、本当の豊かさだと思います」と彼女は言いました(「菜種梅雨」)。その一文を拝借し、今年の年賀状に使わせてもらいました。

 諍わず、心穏やかに、与えられるものに身を置き、楽しむ。その豊かさを、今日出会う人にお福分けできたら。その一年の初日です。