大空小学校
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なぜそうなるのかはわかりませんが、与えられるべきときに与えられるものが下りてくることが
あります。1月18日の土曜日のお昼にたまたまつけたテレビの番組がそうでした。
関西テレビ制作のドキュメンタリー「みんなの学校」です。文化庁芸術祭のテレビ・ドキュメン
タリー部門で大賞を受賞しました。映像の場所は、大阪市立南住吉大空小学校です。この学校は、
特別支援の対象となる子どもも同じ教室で学んでいる学校です。
ある日、K君が転校してきました。前の学校の校長先生が、うちではどうにも預かれない、とか
で移ってきたのです。あの子がいくならうちの子は行かせたくない、という親もいたそうです。
K君が転校して1日目、2日目。とくに問題なく一日が終わります。何日か経ち、K君が学校から
いなくなった、という一報が校長室に入ります。先生が見つけて教室に連れ戻しました。校長の木
村泰子先生がクラスの全員を集め、自身は教壇にすわってみんなに問いかけます。
「なにがあったん?」
子どもたちが順番に言っていくと、ひとりの子が「なんでこんな問題わからへんの?と言った」と
言います。木村先生は言います、「そりゃわからへんやろ。K君は長いこと病院に入院してて、学
校行ってへんし。…」。
普通に考えると、まずK君になぜ学校を飛び出したのかを問うことのほうが多いのではないでしょ
うか。場合によっては、責めたりもする。でも、木村先生はK君にそれについてはひと言もふれま
せん。「コンテントとプロセス」という視点で見ると、木村先生はコンテントにはそれほどふれず
に子どもたちの間でなにが起こったのか、そのプロセスに焦点を当てている、そう思いました。
別の日、K君が校長室に連れてこられます。K君はクラスの子に殴りかかったのでした。木村先生
が言います、「先生なあ、心配やねん、だれがってK君のことがやで。K君なぁ、教室に戻りたな
いなら、ここで勉強してもええねんで。どうする?教室に戻るか?」。K君は教室に戻りました。
教室に戻ると、K君に殴られた子が今度はK君めがけて殴り始めました。K君は返すことなく殴ら
れっぱなしでした。
この場面でも、木村先生はK君に対して「なんで人をなぐるねん?」とか「そんなことしたらあか
んやろ」とかは一切言いませんでした。言ったのはK君に対してのご自身の気もちでした。
数日後、授業参観の日です。一人ひとりが前に立ち、順番に自分の夢を話します。「医者になりた
い」とある女の子が言います。「お父さんが床屋をしているから、床屋をやります」と男の子。K
君の番です。
「暴力はふるいません、暴言ははきません」。頬に涙を流しながらK君は言いました。
木村泰子校長先生。本当に感動しました。もしできるなら、来年度の南山大学人間関係研究セン
ターの公開講演会にお招きして、直接お話をお聞きしたい、と思うのですが、津村センター長、い
かがでしょうか?