祝婚歌
二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい 立派過ぎないほうがいい
立派過ぎることは 長持ちしないことだと 気づいているほうがいい 完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが ふざけているほうがいい ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても 非難できる資格が自分にあったかどうか あとで疑わしくなるほうがいい
正しくありたいとかいう 無理な緊張には色目を使わず ゆったりゆたかに 光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに ふと胸が熱くなる そんな日があってもいい
そしてなぜ 胸が熱くなるのか 黙っていてもふたりには わかるのであってほしい
吉野弘さん作の『祝婚歌』です。吉野さんは姪御さんの結婚式に出席できないため、この詩をお二人に送ったということです。
この詩は結婚を祝い、これからの二人の門出を祝すものです。私はこの詩に出会ったとき、ファシリテーションに通じるな、と思って読みました。私のひとつのよすがです。
(吉野さんは『祝婚歌』を民謡みたいなものだ、民謡は作者が不明だから、とおっしゃり、著作権は心配ありません、ということです。)