ミンタイシ
裁判員制度が始まって1年が経った、とニュースが報じていました。裁判員になった人が、ストレスで仕事をやめたり、うつになったりした人がいるということで、これから改善していかなければいけない課題も多いようです。
それとともに採りあげられていたのが法廷通訳のことでした。
“I feel very bad.”
麻薬保持で捕まった外国人の被疑者が裁判長の質問にこう答えたのに対し、法廷通訳は「深く反省しています」と訳した、こうした通訳の訳し方が判決に影響を与えているのではないか、と弁護人が問題視している、というのです。英語が堪能な私の友人は、話の前後がわからないのでなんともいえないといっていますが、確かに通訳の訳し方で受ける印象も違ってくることは間違いないようです。
このニュースを聞いて、大学に入りたてのころを思い出しました。
少し仲良くなった友だちと飲みにでかけました。まだ飲みに行くということに慣れていないうぶな時期です。場末のカウンターしかない小さな小料理屋、といったほうがいいかもしれません、そのカウンター席に陣取り、メニューを見て注文しました。
「ミンタイシ、ください」
カウンターのなかにいるおかみさんは、最初首をかしげていましたが、そのあとに大笑い。
「明太子のこと?」
受験勉強で頭の髄まで汚染されていたのか、単なる世間知らずなのか、ちょっと恥ずかしく顔が赤らんだ思いがあります。でも、それで友だちとはより親しくなった気もして、それにそこのおかみさんにはその後も大変お世話になったなあ、だから”I don’t feel very bad.”だったなあ、と今さらながら思い出し笑い。
私たちの日常の生活でもおそらく起こりうるこうした齟齬(そご)や思い込み、決めつけ、行き違いなど。そして、人がそこで自分の解釈を入れることもあって、さらに輪をかけて広がっていく齟齬、思い込み、決めつけ、行き違い、…。
裁判のような人の一生を左右しかねない現場ではなおさらでしょうが、ファシリテーターをしている私たちにとっても心しておかねばならないこという思いをもちました、それはことばだけでなく、その人の気持ちや思いなども含めて。
でも、ミンタイシ、っていうのもかわいくありません?