4月

 顔を上げてみると、白いハナミズキの花が咲いています。周りを見渡します。すると多くの木々の葉の緑が目に飛び込んできます。
 サクラは罪な花だな、と思いました。薄桃色のサクラの花が緑の葉といっしょに咲けば、その緑も映えるだろうに、サクラは花だけで自らを彩りそれが四方に散る姿を見せておいて、やがて緑で自分をくるむ。
 いや、むしろサクラの葉は花が去るのを待っているのかもしれません。ハナミズキの花は他の新緑と共存しているのに、サクラの葉っぱは自分の色を主張するタイミングをじっと待っていたのかもしれません。
 サクラの薄桃。ハナミズキの白。そして木々の緑。自分が見ているものの構図が移り変わる、その構図のなかに溶けて入っていく自分を感じる4月です。