清里
17時40分の「しなの21号」に乗り込みました。
新幹線以外の特急に乗るのは、久々です。通路側の席に腰かけていると、窓側の人がやってきました。スーツ姿の人です。
かばんを網棚にあげたその人がいすにすわると、タバコのにおい。吸うのをやめてウン十年。異常にタバコのにおいに敏感です。おそらく「しなの」は全車輌禁煙なので、ホームでしこたま吸い納めをしてきたのでしょう。
電車が動き出し、すぐに駅弁の封をときます。と、すぐに停車。名古屋を出て、金山、千種と各駅で停まるその車窓を見ると、これから仕事を終え、家路に着く人がいっぱい。駅弁を食べながらその光景を眺める自分が笑えます、日常性のしきりがそこにあります。
「しなの」は闇のなかを塩尻へ。そこから今度は東京方面に乗り換えます。20分弱の待ち時間で各駅停車の甲府行き。
こんどは日常と同居です。学生がいる、通勤客がいる。駅の乗り降りが多く、車内の空気が動きます。
小淵沢駅に着くまでに何本かの特急に追い抜かれました。小渕沢は特急が停まる駅なのに、インターネットでこの各駅停車が表示された理由がわかりました。この時間では塩尻でどの特急に乗っても、小海線に乗れるのは21時24分発の最終電車です。
小淵沢駅小海線プラットホームにある小さな待合室。そこに、私ひとり。
エアコンの音しか聞こえなかった数分後、それが3人になり、2両編成の最終に乗ったのは8人でした。そのうち、おそらく4人はその風体から都会から移り住んだ人、先住民2人、旅人2人。そのひとりが私です。
電車は暗闇広がる高原を少しずつ登っていきます。日常から半日常、そして非日常へ。人も、電車の音も、空気も、そして気持ちも変わって、清里へ着きます。