会社に入って1年生だったころ、企画書を書き、部長に提出しました。
 戻ってきた企画書には部長印が押してありましたが、その印は真横に押してあります。首をかしげていると、「それは、まあまあだな、という意味だ」と先輩が笑いながら教えてくれました。「上下逆に押されていたらダメ、押していなかったら論外」ということのようです。なぜそうなのか、どうしたらよくなるのか、それを考えなさい、と言われているような気がしました。
 講話をしました。就職活動についてです。
 履歴書の話しをしていると突然、
 「履歴書には印鑑を押すのか」
と質問が出ました。
 ちょっとびっくりしましたが、確かに最近の履歴書用紙には?が印刷されていません。そのせいか、書かれた履歴書には押印されていないものも見かけます。
 履歴書は半公的な書類であること、書いてあることに虚偽はないという証であるという意味もあること、そしてなにより受け手となる人がどのように受け取るか思いを馳せること、そんなことを話しました。
 捨印まで押させる独特の印鑑文化は、時代とともに変わっていく。そのうち、印鑑そのものもなくなってしまう日が来るかもしれません。