Tグループとは No.068 誕生から75年さらなる発展のためのパラダイムシフトに向けて:クーパーライダーら(1994)によるアプリシエティヴ・インクワイアリ・アプローチ(Appreciative Inquiry Approach)(2)5つの原則
AIとは、グループや組織といったシステムの中に現在すでにもっている「生き生き輝くエ ネルギーを与える力(Life-Giving Forces)」を見つけ出し、それを強化拡大するように、メンバー相互に協働的に取り組む参加型のアプローチであると紹介されます。
「アプリシエイティヴ」とは、「真価を評価する(appreciate)」という意味であり、「インクワイアリー(inquiry)」とは、問いかけをすることであり、AIとは問いかけを通してメンバーの真価を探求する過程であると言えます。
AIには、社会構成主義をベースにした5つの核となる原理があります (Cooperrider, Whitney, & Stavros, 2008; Watkins&Mohr,2001)。
1.構成主義原理 (The Constructionist Principle)
この原理では、組織の知識とその組織のありようは、互いに関連し合い織りなされてい ると考えています。問いかけることにより、それに応えたり語られたりす る言葉により組織は構築され、組織の将来を生まれさせると考えられています。
この原理から、組織をどのように認識するか によってその組織のありようが決定されてい くと考えられています。組織は未知の潜在力をもっ ており、変化するものであり、構成メンバー によって語られることによって創り出されていくと考えています。それゆえ、リーダーや変革推進者 (change agent)は、組織のメンバーにどのような問いかけをして、会話を紡いでいくかがとても大切な働きかけとなります。
2.同時性の原理 (The Principle of Simultaneity)
この原理では、問いかけと変化は別々に起 こるのではなく、同時に起こると考えられています。問いかけは介入そのものです。人々が考えたり話したりしていることや、人々 が発見したり学んだりしていること、また人々が将来のイメージについて想像したり対話したりしていること、その会話がが変化の源になり変化が起こるのです。その意味では、最初の問いかけがとても大切であり、その問いによって見出されたものや発見され たことがストーリーの方向性を創り、展開され ていくになります。
3.予期の原理 (The Anticipatory Principle)
AIアプローチでは、建設的な組織変革や改善のための重要なリソースは、将来につい てのイメージや日常の会話の中にあると考え られています。この原理では、将来のイメージ が組織の中のメンバーの現在の行動を引き起 こすと考えられています。映画がスクリーンに映し出されるように、人々が生きる組織では、彼らの期待が映し出されていると考えられています。それ故、組織で働く人々が組織をどの ように考え、組織はどのように機能し、どこに到達しようとしているか、どんなふうになりたいと考えているかといった期待(予期) が埋め込まれた生成的イメージがとても重要になるのです。
4.詩的原理 (The Poetic Principle)
この原理を理解するために人間が生きている組織とは「本を開く」ようなもの、 といったメタファが使われることがあります。組織のス トーリーは絶えず、そこにいるメンバーが本の共著者となって描き綴っていると考えられています。過去、現在、未来に至るまでも、その組織で学んだり考えたり解釈したりしていることをメンバー自身が描き続けているのです。よって、 問いかけによって、ネガティヴなも のに光を当てるのか、ポジティヴな方向に光を当てるのかで、組織のストーリーは変わっ てくるのです。
5.ポジティブ原理 (The Positive Principle)
この原理は、より具体的であり、 AIの実 践を通してAIアプローチ実践者たちはこの原理に確信を強くもつようになってきていると、クーパーライダーらは述べています (Cooperrider eta1., 2008)。
ポジティヴな気持ちや社会的なつながり、希望をもつといった態度、そしてひらめきや他者とともに何かを創り出す純粋な喜びなどのポジティヴさは、変革のための推進力として大 切です。ポジティヴな問いかけが組織やグループに与えられるほど、長期的で効果的な変化を生み出すことになるのです。(つづく)