Tグループとは No.069 誕生から75年さらなる発展のためのパラダイムシフトに向けて:クーパーライダーら(1994)によるアプリシエティヴ・インクワイアリ・アプローチ(Appreciative Inquiry Approach)(3)5つのD(Part_1)

 前述(No.065)の5つの原理とともに、AIアプローチでは、グループや組織の変革に向けた5つのDの生成的なプロセス・ステップが考えられています(Watkins & Mohr,2001)。そのステップは、図のような5つのステップで示されています(図)。

 私ごとですが、J.M.Watkinsさんとは、2006年に米国Marylandで開催されたWS「Appreciative Inquiry Approach to Designing Experience-Based Learning」に参加したときのファシリテーターでした。すごく優しくそして深みのある関わりをしてくださいました。今は、もう亡くなられたとのことです。この一連の記事も追悼の気持ちをもって書かせて頂いています。

ステップ1:定義する(DEFINE)

 最初のステップでは、コンサルタントもしくはファシリテーターがAIプロセスを明確にクライエントに伝え、AIアプローチを実施するプロセスに関してクライエントとコンサルタントもしくはファシリテーター(支援者)との間で合意を得ることがAIアプローチ実施前の大切な仕事になります。

 情報収集をしながら、クライエントが学ぶためにどのようなシステムが必要なのか、組織に適切であると思われる問いかけのプロセスを、クライエントと一緒に考えていきます。この段階において、一般的な流れは、クライエントにAIアプローチを紹介すること、そして問いかけのプロセスのために組織にカスタマイズしたインタビューガイドを創り出し、そして以下に示す一連の問いかけのフェイズ【(DISCOVERY)⇒(DREAM)⇒(DESIGN)⇒(DESTINY/DELIVER)】を組織のシステムに位置づけ展開することの合意を得ることです。

ステップ2:発見する(DISCOVERY)

 このステップでは、主に組織のメンバーに対して行うインタビューガイドを創り出すために、AIコンサルタントとともに働くことになる中心的なグループ(コアグループ:core group)の人たちと共に、作成したインタビューシートを用いて相互インタビューを実施したりします。インタビューが終わると、コアグループのメンバーは、対話の中から発見したことなどを語り合い、問いかけから生まれてきたストーリーやキーとなる言葉やメッセージなどを味わい、吟味します。そして、インタビューから生まれる主たるテーマ(取り上げたいトピックス:アファーマティヴ・トピック)を吟味し決定します。

 その話し合いをもとに、再度、インタビューガイドを練り直し、組織の構成員を対象にインタビューシートを用いた対話(ハイポイント・インタビュー)の場を創ることになります。

 この発見のステップで、人々はすばらしい達成感のある特別の体験(ストーリー)をわかちあい、その中から組織の構成員が生き生きとする源となるポジティヴコア(positive core)を見出すことを促進するプログラムとして計画されます。それは、これまでの組織や個人のもつすばらしいストーリーに光を当てるとともに、将来に起こるであろう可能性をわかちあうことが大切になります。

ステップ3:理想の未来を描く(DREAM)

 理想の未来を描く(DREAM)ステップでは、現在の組織のメンバーや関係者たちによって、価値のある、また生き生きした未来を描くことを通して、ポジティヴコアを高めたり現状にチャレンジしたりすることに動機づけられます。

 DREAMのステップにおける主たる目的は、関係者の希望や声を大切にしながら、組織のこれまでの歴史の中にある組織のメンバーがもっている可能性を広げ確かなものにすることなのです。組織のメンバーや関係者との対話を通して、この段階で、メンバーが心の底から望む理想の未来をイメージするメッセージを紡ぎ出し、「マクロな喚起的な声明文(macro
provocative proposition)」として言語化します。これは、ポジヴィリティステートメント(Possibility Statement)ともよばれ、もっとも最高の組織の状態を言葉で記述したメッセージを生みだす作業です。時には、理想の組織の状態を、クリエイティヴな作品として表すことがあります。(つづく)