Tグループとは No.071 誕生から75年さらなる発展のためのパラダイムシフトに向けて:クーパーライダーら(1994)によるアプリシエティヴ・インクワイアリ・アプローチ(Appreciative Inquiry Approach)(5)イメージの(ポジティヴに想像する)パワー

クーパーライダーは、未来の創造におけるポジティヴなイメージの影響を理解するために、幅広い社会科学の研究に目を向けました。そして彼は、それらの理論を組織変革の理論と実践に与える影響について結びつけたのです。

 クーパーライダーとSureshが編集した「Appreciative Management and Leadership」の書籍の章「Positive Image:Positive Action」に基本的な研究成果を提供しています。

 1950年代以降、東洋の文化における癒しの考えを基礎として、西洋医学では身体を癒やすための心の力(power)の存在に気づいてきています。今日では研究誌から一般誌まで、「自己」を全体論的性質(holistic nature)としてとらえる信念が主流になりつつあります。

◎プラセボ効果:自分自身のイメージの力
 人は治療を信じると 肉体的にも精神的にも良くなります。 研究では、患者の3分の1から3分の2がプラセボに肯定的に反応することが示されています。このことは、薬や治療を処方している医師が患者と同じくらい強く信じている実験ではさらにその影響は強い結果を示しています(Beecher, 1995; Cousins, 1983; White, Tursky, Schwartz, 1985)。

◎ポジティヴな感情:
 ポジティヴな感情は、学習能力、創造的な問題解決能力、社会的有用性、および効果的な意思決定能力を高める結果を得ています(Seligman, 1975; Isen, 1978; Bower, 1981)。

◎内的対話:
 成功した人々は、成功を内的で、グルーバルで、永久的なものとして、一方失敗は外的で、一時的で、一過性であるとして、説明する内的対話をしています。成功しない人々に反対のダイアログがあると言われています(James、1890年; Ryle、1949年; Seligman、1975年)。

◎対人間の対話:
 成功する対人関係では、少なくとも2つの肯定的なメッセージと1つの否定的なメッセージの割合で構成されています。私たちが意図的に選んだ言葉やイメージは、実際に対人関係の状況を創り出し、肯定的な言葉やイメージは肯定的な相互作用につながっていくことを示しています(Sloterdijk,1987; Royal,1997)。

◎ピグマリオン効果:
 教師の生徒に対するイメージが生徒の成績に影響を与えるという結果が示されました。教師が特定の子供(無作為に選ばれた生徒)に才能があると言われると、その子供たちはより良いパフォーマンスを発揮しするという結果を示したのです。ー教師は彼らが教育活動の中で期待している生徒に対して異なる行動をとったのです。教師の生徒への期待はIQや家庭環境、過去の成績よりも優れた予測因子となるのです。成功した経営者は、しばしば最初の上司として強いメンターを持っていたという研究結果もあります(BrophyとGood 1974; RosenthalとRubin、1978; Jussim、1986)。

◎ポジティヴ思考
 ある研究で、行動科学者たちは、心臓の大手術に直面している人たちの思考パターンを否定的なものとは対照的に、肯定的なものの比率を調べました。研究では、主治医が最高であると感じて手術に臨んだ人、使用された医療技術が実証されており安全であると感じて手術に臨んだ人は、恐怖と懸念に支配された感情で手術に臨んだ人よりもはるかに高い確率で回復したことが実証されています。これらの研究では、ポジティヴな思考とネガティヴな思考の望ましい比率は約2対1であると結論づけられています(Cooperrider & Srivastva, 1990, p.109)。2:1の比率では、人が経験する幸福度のレベルに著しい差が予測されるとのことです。

◎文化のイメージ:
 未来のポジティヴなイメージの台頭は、文化の台頭に先行するか、それに伴って起こるのです。ほとんどすべての社会的進歩は、ユートピアの著作にまず最初に記述されています(Polak, 1973; Markley, 1976; Morgan, 1987)。

◎ポジティヴな能力:
 ポジティヴなイメージを使用して、失敗よりもむしろ成功をモニターすることはゴルフ、オリンピックの陸上競技および人生の能力を高めることになります(ニクラウス、1974年; Ostrander、1979年; Sheikh、1983年)。
 ジャック・ニクラウスは、ゴルフ・マイ・ウェイの本で、ポジティヴなメッセージ(「森の中に打つな」ではなく、「フェアウェイの真ん中を打つのだ」)が、心の中で想像することが体全体に影響を与えると主張しています。逆説的ですが、私たちのほとんどは、失敗を排除し、ネガティヴなセルフモニタリング(「森に打たないで!」)をすることがパフォーマンスを向上させると信じていますが、全く逆のことが起こっているように見えます。

 こうしたことを、組織レベルで考えると、少なくとも私たちは社会的に世界を構築する可能性があり、私たちが想像するものを創造する力を持っているという合理的な証拠があることを示しています。従業員が違いを生むことができると信じることは、組織の変化を促進するプロセスは意識的に起こると考えられます。また、他の人に力を与える方法を知っているリーダーにはやりがいを感じることができるでしょうし、システムの中のエネルギーは、仕事に生命と活力を与えるポジティヴで、生成的で、創造的な力に向けられると考えられます。

 ワトキンスらの書籍では、以下のような方程式を提示してくれています。

 社会構成主義+イメージの力=組織変革におけるAI

  研究(Cooperrider、1990)からわかるように、人間は将来の予測イメージに強く影響されます。個人レベルでの生理学的反応から新しい戦略や組織アーキテクチャの創造に至るまで、無数の方法で、私たちは私たちが期待するまさに未来を集合的に創造するのです。

 ワトキンスらは、以下のように述べています。私たちがどのように未来を形づくるかについてのこの見方は、組織の変化のプロセスを理解するまったく新しい方法を私たちに与えてくれます。 変化は、始まり、中間、終わりのあるイベントとしての従来の見方に限定されるのではなく(たとえば、Kurt LewinのUnfreezing-Changing-Refreezingのモデル)、今ではすべての会話で進行中の継続的なプロセスとして変化が見られると考えています。 私たちは、私たちが行うすべての問いかけにおいて、私たちの組織および/または世界について何かを「知ろう」としたり、または理解しようとしたりするためにとるすべての行動において起こると考えています。知識の哲学としてAIの考え方が存在しています。(つづく)