Tグループとは No.070 誕生から75年さらなる発展のためのパラダイムシフトに向けて:クーパーライダーら(1994)によるアプリシエティヴ・インクワイアリ・アプローチ(Appreciative Inquiry Approach)(4)5つのD(Part_2)

 「Tグループとは」No.69話の続きをお話しします。

ステップ4:デザインする(DESIGN)

 このDESIGNのステップは、組織の社会的基本的設計概念を創り出すことであり、前述の「ポジヴィリティステートメント(Possibility Statement)」を創造し、それを組織の 中に組み込むようにデザインするの段階です。

 この「ポジヴィリティステートメント」は、組織のさまざまな要素と関連しています。たとえば、リーダーシップ、意思決定、コミュニケーション、またカスタマーサービスなどに関連しており、それぞれの要素に反映させることが可能になります。すなわち、それぞれの要素の中に、発見したこと (DICOVERY)と最高の未来像を描いたこと(DREAM)を統合するように、組織が成功している具体的な状態をデザインすることがとても大切になります。

ステップ5:宿命づける・持続する(DESTINY/DELIVER)

 宿命づける(DESTINY)ステップでは、将来の新しいイメージを組織のメンバーに伝搬し、共迪の目的意識や動きを育て続けることができるようになる段階なのです。わかちあっ た最高の未来像をベースにしながら、この段階の行動は、学び続けることであったり、時には調節することであったり、時には即興的に動いたりできるようになる状態を指しています。このステップでは、変革や実践への流れや勢い、その潜在力は高くなってきているでしょう。なぜなら、このステップまでに、最高の未来像のポジティヴイメージをシェアしたり、すべての人と最高の未来像をともに創り出すやりとりが積極的に行われたりしているからです。AIアプローチを持続させるカギとなるのは、「アプリシエイティヴな眼appreciative eye)」をもつことであると述べられています (Cooperrider et.al, 2008)。

 AIアプローチでは、以上のように、5つの原理と5つのプロセスを大切にしながら、ポジティヴチェンジを生み出そうとする組織開発のアプローチです。このAIアプローチのベー スには、Lewinの変容モデルに示されている3つのフェイズが想定されています。

 それは、過去のよい状態から気づき学ぶ能力をもつ状態(continuity)、予期せぬ創造的な行為が生まれるアイディアに気づく状態(novelty)、そしてその結果、システムに新しい変化が起こり望ましい状態に向けて行動が生まれる状態(transition)の3つのフェイズが考えられます(図)。

 AIアプローチでは、組織の日々の活動の中にあるアイデンティティ、プライド、賢明さや伝統などの事象に光を当てることから始まり、その日々の連続性(continuity)は、変化が生まれることは当然であるという認識をもつようになることが重要になります。その状態を、Lewinの言葉では溶解作用(unfreeze)が起こる状態といえます。

 次に、AIの対話やプログラムの進展の中で、予期せぬ出来事が起こる可能性を感じるようになります(novelty)。これは、Lewinの言葉では変化(change) とか移行(moving) にあたると考えられます。そして、ポジティヴな期待に向けて目に見える変化が起きるのです(transition)。このフェイズでは、共通のビジョンが見えてきて、有効なフィードバックが行われるようになったり、新しい試みに対して支持的になったりするのです。いわば計画された変化として定着するのです。これが、Lewinの変容モデルにおける再凍結作用(refreeze)と考えられます。

 AIアプローチは、人間関係トレーニングや組織開発におけるさまざまな考え方を導入しながら、ポジティヴな側面に光を当てることによって、グループや組織が健全に発達し学習することを促進するように支援するアプローチなのです。(つづく)