Tグループとは No.060 グループプロセスへの働きかけ:Schein(1999)のプロセスからパターンへの視点をもつこと

「Tグループとは」シリーズ、今年(2020年)の7月29日に第一話をスタートして5ヶ月間、本日なんとか60話をご紹介するところまで来れました。

 「Tグループとは」についていろいろと書きたい思いはあったものの、流れも中身も未知のまま歩んでの60話。このような形のものができあがるとは、全く当初は思いもよらない道が生まれた感じです。

 私が出会った人々から学ばせていただいた、私にとっては宝物の披露だったのかなと思ったりしています。

 この後、10話ぐらい、今そしてこれからの「Tグループとは」というのが書けるといいなと漠然と思っています。2021年の早春には実現したいと思っています。この冬に自分に問いかけてみたいと思います。

 そして、残りの30話は、私の人生の残された中で、新しい発見があることを願って残しておきたいと思います。

 まずは、しばらく、Facebook上に公開した記事を、JIELのホームページ上の「所長のブログ」に再掲載していきます。どこかのタイミングで、関心をもっていただいた方は、JIELのWEBにご来訪ください。
 それでは、60話目!!

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Tグループとは No.060 グループプロセスへの働きかけ:Schein(1999)のプロセスからパターンへの視点をもつこと

 プロセスに気づき、学びを深めていくために、またグループのプロセスへの介入をするための視点として、「プロセスからパターンへ」の着眼点をあげておきたいと思います。

 本シリーズにおいて,個人レベルのプロセスの視点として、ウェインシュタインら(Weinstein, Hardin, & Weinstein, 1976)によるセルフサイエンスを用いた教育プログラムの紹介を行いました(No.013参照)。またウェインシュタインとアルシュラー(Weinstein & Alschuler,1985)は、自己知識(self-knowledge)という概念を用いて、自己知識の4つステップの発達段階を示しています。彼らの主張の中で、重要なステップとして、自分の行為をパターンとして認識することの大切さが強調されています。

 このパターンの認識は、グループ・プロセスにおいても、体験していること(“今ここ”に起こっているプロセス)に気づくことだけではなく、そのプロセスがどのように繰り返されて生起しているかに注目することであり、E.Scheinは、パターンとして認識することはとても重要であると記述しています。“今ここ”で起こっているといったプロセス理解、すなわち、点としての把握だけでなく、そのことが一定の規則で反復して起こっていることに気づくことができるならば、そのパターンの背景にあるもう一歩深いレベルでの個人の理解やグループの理解が可能になると考えているのです。

 Schein (1999,稲葉・尾川訳,2012)は、観察及び介入の可能な領域として、コンテントとプロセスという概念の他に構造(structure)の視点を提案しています。反復して起こる課題の進め方や意思決定の仕方などを通して、同じような行動が繰り返されることから構造が生まれくると考えています。

 人とのかかわり方などにおいて、権威や親密さに関連するパターン化した行動からルール(ノーム)が生まれることになると考えられます。こうしたパターン化して定着してしまっているチームのノーム、組織構造や組織風土に着目していく視点が改善・改革のためには必要になると考えられます。すなわち、その構造を創り出しているプロセス・データ(“今ここ”で起こっていること)を活用しながらチームや組織改革に向けての介入が重要になってくるのです。また逆に、個人やグループ・組織が成長・変化するということは、古い行動パターンを壊して、新しいパターンとして生まれる行動を修得することであるともいえます。

 ファシリテーターやコンサルタントは、いかにプロセスに気づくかということとともに、そのプロセスの反復性に気づき、そのパターンの改善に向けて最善の働きかけ(介入)をすることが求められるといってもよいでしょう。(つづく)