Tグループとは No.054 グループプロセスのダイナミックス:情動の問題が意思決定に影響を与える

 Schein(1981)は、代表的な意思決定の仕方として、以下のようなものを取り上げています。

① [反応なし]ポトン (plop) と話題がグループ°の中に落ちてしまう:たとえば誰かの「自己紹介した方がいいと思うけど…」という発言だけで終わる。
② [1人による決定](self authorized agenda):「自己紹介した方がよいと思うので、・・では、私から…」と1人が提案し、それを本人から始めてしまう。
③ [2人による決定]握手(hand-clasp):「私は、自己紹介したらどうかと思うのです。」「僕もそう思うよ。それでは、僕から・・・」といった具合に意思決定が2人で行わ れていく。
④ [反対いないよね?](Does anyone object?) と少数派による否定的な意見を一応聞く:「私たちみんな賛成だよね。」(マイノリテイによる決定)も含まれるだろう。
⑤ [多数決による決定](majority-minority voting)挙手や投票を行い、過半数を得ることで決定する。
⑥ [意見を問う決定](polling) :「みんながどう考えているか、表明しましょう。あなたはどう思いますか?」と投票前でも後でもメンバーの意見を問いながら決定する。
そして、もう1つは、
⑦ [合意の吟味] (consensus testing):反対の意見を吟味したり、実際に決定したことを実行したりするために強い反対があるかどうかを検証しながら合意を取り付けようとする意思決定の方法である。コンセンサスによる決定では、必ずしも全員一致でなくてもよく、本質的には全員が同意しているということが重要になります。また、意思決定の方法について合意をしておくことも大切なことです。

 どのような意思決定のスタイルをとるかは、適宜状況により異なるでしょうし、またどのような意思決定のスタイルを“今ここ”でとっているかに気づき、その意思決定の仕方を吟味しながらグループ(チーム)や組織の運営をしていくことは大切になるでしょう。

 とりわけ、コンセンサスによる意思決定に近づけることができるならば、その意思決定は、その後のメンバーの意思決定に従った行動実践に繋がると考えられています。

 コンセンサスをめざすことは、「勝つか、負けるか」「与えること、受けること」といった両極的発想からの転換が求められ、融合論(Synergy)的な物の見方として、「相違から来る区別」ではなく、「対立またはパラドクシカルなものを、底に根ざす共通性を探求する」ことを願っているのです。すなわち、状況の中に存在する両極的対立要素として見えるものの間に意味深い関連性を見出していこうとする態度が必要となります。「あれかーこれか」の発想から「部分ではなく、全体を見る」視点への転換を促していく必要があるのです。

 そのために、メンバー間の関係性がとても重要になります。単に形式的、表面的一致より、根底的、基本的合意を得ることを努力目標とすることにより、討議のプロセス、とりわけ人間関係的過程、の質が問われると共に、コンセンサスをめざす結果、関係性が向上することが考えられます。

 プロセスに影響を大きく与えているのが、グループダイナミックスの核となる情動の問題になります。情動の問題にはいろいろな視点がありますが、つんつんは比較的わかりやすいのではないかと思い、J.Gibbの4つの懸念を取り上げています。このシリーズのNo.046で紹介しています。彼の提案する①「受容懸念」、②「データ流動懸念」、③「目標形成懸念」、④「社会的統制懸念」がいかに低減し、相互信頼の風土が形成されているかがコンセンサスを得るためのベースになると考えられます。

 グループのメンバー間の関係が、①相互信頼・相互受容[受容懸念の低減]、②自由、自主的・主体的・自発的な対立を恐れないコミュニケーション[データ流動懸念の低減]、③取り組みへ高い関心と創造的な活動[目標形成懸念の低減]、④相互依存・創造的な規範生成・今ここに生きる[社会的統制懸念]となっていくことが大切です。また、コンセンサスをめざす過程でそれらの懸念の低減に取り組み、いかにメンバー間の信頼関係を創るかが大切になるのです。まさに、こうしたことに取り組むのがTグループと言えるのではないでしょうか。(つづく)