Tグループとは No.044 グループは変化する:Tuckman(1965)のモデル

 Tuckman(1965)は,小集団の発達に関する50ほどの研究をレビューして、グループの現象を社会的または対人的な視点によるグループの構造と、相互作用の内容としてのグループの課題との2領域に分けて、発達段階を4つの位相があることを見出しています。

 彼は、4つの位相を「形成(forming)」-「混乱(storming)」-「規範化(norming)」-「遂行(performing)」と記述しています。

 1.「形成(forming)」の段階:グループの構造としては依存の検証(testing-dependence)とよび、このグループではどのような対人行動が受け容れられるのかを試しながら、一方でトレーナーやファシリテーターやパワフルなメンバーなどにいわゆる従来の規範に従った依存的な行動をとろうとする段階と考えれます。グループの課題の領域では課題志向的(orientation
to the task)な段階であり、グループメンバーはここでは何をするのか、そのためにどんな情報が必要なのかなどを探ろうとします。

 2.「混乱(storming)」の段階:グループの構造の発達過程として、グループの内部に葛藤(intragroup conflict)が生まれます。グループメンバーは特定の他者、たとえばファシリテーターやパワフルなメンバーなどに敵意を向けるようになり、一体感の欠如がこの段階の特徴であるとされています。要求される課題への情動反応(emotional response to task demands)が、この段階でのグループの課題における主たる動きになります。
 グループメンバーは、個人的な志向とグループの課題との間にかなり差異があるように見え、課題の要求に抵抗するような情動的振る舞いが起こると考えられています。特に、グループの課題として、自己理解や自己変革を目標としている場合にはその傾向が強く見られます。

 3.「規範化(norming)」の段階:グループの構造に関する課題は、集団の凝集性の発達(development of group cohesion)と名づけられています。グループメンバーはグループを受け容れ、グループの特異性をも受け容れるようになっていきます。グループはメンバーを受容し、その関係を維持・継続させたいと願い、新しく創られた規範によってグループは実態をもったものになっていきます。グループの課題領域のテーマは、メンバーが考えていることのオープンな交換の段階と命名されています。
 Tグループなどでは、自分自身について、また他のメンバーについて話し合いがなされるようになります。そこでは互いが表出し合った情報に関して考えられる解釈の可能性が自由に語られ、この段階では他のグループメンバーへのオープンなやりとりが両方の領域で生まれます。

 4.「遂行(performing)」の段階:グループの構造に関する領域では、機能的な役割の関係性(functional role-relatedness)が問題となります。「規範化」の段階において実態としてのグループを実感できるようになると、グループは問題解決に向かって動きやすくなります。メンバーは課題を遂行するためにそれぞれの役割を担うことができ、グループはその課題が遂行される上で「共鳴板(soundingboard)」のような機能を果たすようになります。グループの課題領域での発達では、解決の出現(emergence of solutions)の段階とよばれ、課題遂行への建設的な試みが見られます。

 たとえば、Tグループにおける解決の出現の段階では、自己のもしくは対人関係のプロセスに対して、自己変革にむけての洞察(insight)が行われやすくなります。これまでの3つの段階と同じように、グループの構造と課題における領域との間に本質的な一致が見られるようになります。

 その後の研究において、タックマンとジェンセン(Tuckman&Jensen, 1977)は、5つめの段階として、グループ活動を終え、グループを解散する段階として「散会(adjourning)」を追加しています。Tグループにおいて、トレーニングが終了しグループメンバーそれぞれの現場に戻っていく終結の段階にあたり、この時期をどのように過ごし現場に戻っていくかということは、Tグループ参加者にとって大切な課題です。(つづく)