Tグループとは No.045 グループは変化する:Schutz(1958)のモデル

 Schutz(1958)の初期の研究にはトレーニンググループに関する研究がありますが、後の研究(Schutz,1967,1973)ではエンカウンター・グループを中心に討論されるようです。彼はグループのダイナミックスを観る視点として3つの位相を仮定しています。グループの発達は、「内包(inclusion)」の位相から「統制(control)」の位相へ、そして「情愛(affection)」の位相へ展開すると考えられています。

 グループの初期の「内包(inclusion)」の段階では、誰がこのグループのメンバーであるか、あるいはメンバーでないかといったグループの境界に関する懸念が起こります。それは信頼やグループへのコミットメント(関与)を創り出すのに大きな影響力をもっています。グループのメンバーは恐怖や好奇心、そしてグループメンバーとして内包したいとか内包されたいといった欲求によって動機づけられています。

 「内包(inclusion)」の問題が解消されると、グループは「統制(control)」の位相に移ります。そこでは、勢力や権威、責任の所在に関する懸念が顕著になり、メンバーの勢力の問題や権威の問題といったグループメンバーの影響関係を取り扱うように動機づけられるようになります。

 この位相は、グループの発達にとってとても重要な時期であり、その後のグループの発達に影響を与える転換点になるといわれています。すなわち、この「統制(control)」の位相が避けられたり、無視されたりするとグループの発達は遅滞することになります。

 「統制(control)」の位相に続いて、凝集性の高まりに至ることになります。グループメンバーがどれぐらいお互いに親密でいたいか、距離を置きたいか、わかちあいと開示がどのくらい生産的で適切であるかといったことが課題となります。この「情愛(affection)」の位相が結末に向かうとグループは終結しはじめることになります。

 Schutzによると、上述の位相の逆の順で終結を向かえることになるといわれています。すなわち、「情愛」の位相がまず終わり、次いで「統制(control)」の位相、そして最後に「内包(inclusion)」の位相にもどり終結することになります。

 Schutzは、これらの3つの欲求をもとに個人の対人関係の志向性を測定するために、FIRO-B(Fundamental Interpersonal Relations Orientation-Behavior Scales)を開発しています。その尺度を用いて内包的欲求に関する程度を4段階に分けて、中程度のメンバーから構成されるグループほど一般に問題解決を好む行動が多く生まれ、内包への欲求がより強い、もしくは弱いグループより凝集性は高くなることを見出しています(Schutz、1958)。(つづく)