Tグループとは No.027 “今ここ”のプロセスに気づき語ること

 「コンテントとプロセス」という考え方を説明することは、なかなか難しいですね。本シリーズのNo.012に、「プロセス」とは「自分が体験していること」であり、「プロセス」を語るとは、「体験していること」を言葉で語ることと言えると書きました。その「体験していること」とは、チームで行っている仕事や課題など「やっていること」が「コンテント」ならば、その仕事や課題をやっている時に、どのように行動し、どのようなことを考え、どのような気持ちが生まれ、その課題や仕事に取り組んでいるかと言えるでしょう。

 「コンテントとプロセス」をもう少し、きっともともと生まれたであろう考え方に近い言葉で表現するならば、「公に扱われている議題(アジェンダ:Agenda)と隠された議題(Hidden Agenda)」と言えばいいでしょうか。会議や仕事においてどんどん話し合いや仕事が進んでいく過程で、メンバーの中にいろいろな気持ちや考えが生まれます。「この進め方で大丈夫かな?」「今何のためにこの話をしているだろうか?」「リーダーが勝手に決めているので、もう任せおこう!」このような会議や仕事の話し合いにおいて表には出てこないが、一人ひとりのメンバーが考えていること、メンバーの心の中で起こっていることが「プロセス」と呼ばれるものです。

 このプロセスに気づき、そのプロセスをいかにオープンにすることができる関係づくり、チームづくりができるかがとても大切になります。なぜなら、仕事や課題はメンバー間のコミュニケーションを通して進められますが、もし心の中で起こっている(プロセス)をオープンにまた十分に語られずに進められているとしたら、どのようなことが起こるでしょうか?決定したことに対する責任を共有する気持ちは起こらないでしょう。その前に目的も明確じゃないと思っているならば、また自分がメンバーとして認めてもらえていないと思うならば、自分のアイデアや疑問に思うことを発信はせずに、仕事や課題を明確にしようとするする気持ちも、その仕事に意欲的に取り組む気持ちも起こらないでしょう。

 “今ここ”で起こっているプロセスをざっくばらんに語り合える関係を創ることができたならば、機能的で効果的なチームに成長することができると考えられます。そうした体験は、なかなか日常では実現することは難しいものです。心の中に恐る恐る感じていること考えていることをオープンにすることはとても勇気がいることですから。

 いかにプロセスを語り合える関係を創るか?いわば、このことが組織開発の大事な視点だと言えるとつんつんは考えています。チームや組織の中で、自分が感じたり考えたりしていることを率直に話ができ聞いてもらえる関係づくりが、自由で開放的で信頼感に満ちたチームや組織づくりにつながるのです。

 特に、多くの場合、渦中の中では、そのプロセスを語ることはできないものです。自分の発言が与える影響が怖かったり、自分の発言がチームや組織にふさわしくないと思われるのではないかと心配したり、まだこのチームや組織の一員としては認めてもらえていないのではないかという懸念があったりして、プロセスを語ることは難しくなるのです。

 よって、仕事や課題が一段落した後で、「実は、あの時・・・」と語ったり、仕事から離れた場のメンバーの間の会話の中で、また他の部署のメンバーとの会話の中で 「うちのチームは・・」「うちの組織は・・」と語ることはできるものです。“今ここ”の渦中ではなく、“あの時あそこ”では可能なのです。きっと当事者を離れた場では、恐れを感じることが少ないからだと思われます。

 Tグループでは、“今ここ”で起こっているプロセスについて語ることを通して、学びを深めていきます。どうしても“あの時あそこ”でのことを語ることの安心感から、Tグループのメンバーの関わりの中で起こっているプロセスを避け、“あの時あそこ”での話になりがちです。グループや自分自身の中に起こる不安や恐れを乗り越えて、すなわち日常の生活とは異なる会話〜“今ここ”での会話〜が生まれることにグループメンバー一人ひとりが関与しながら、関係づくり、チームづくりに挑戦をします。

 “あの時あそこ”でのことを語りながら、実は“今ここ”でのプロセスを語っているということもあります。例えば、「うちの会社のリーダーは、名ばかりであまり機能しないのですよ。」“あの時あそこ”のことを話しながら、実は「今Tグループのトレーナーが何もしてくれないだよね。」と“今ここ”のことを暗に話しているかも知れません。「私は、あまり会社では役に立っていないのですよ。」と“あの時あそこ”のことを言いながら、実は「私はこのTグループの中で役立っていないじゃないか不安な気持ちでいるんです。」と“今ここ”を語っているかも知れません。

 その体験からの学びを通して、“今ここ”でのプロセスを語り合うことで、すなわちプロセスをオープンにすることで、チームや組織が壊れるのではなくクリエイティヴなチームや組織が生まれていくことを体感できれば、日常でのチームや組織づくりにおける自分の働きや課題を明確にし、活動することができるようになると考えています。Tグループに参加された方は、チームや組織のメンバーは“今ここ”で何を考えたり感じたりしているかということに光をあてることが容易になられていることと思います。

 このような体験ができることがTグループであり、その体験をした人がチェンジエージェント(change agent)になり、自分が所属するチームに、組織に、社会に変革をもたらす人になってもらいたいという願いがあります。こうしたことより、Tグループへの参加がチームづくりや組織づくりの原点であるという由来でもあります。(つづく)