Tグループとは No.016 米国NTL主催のトレーナートレーニング(TPLE)に参加する

 1985年夏から1986年夏までの一年間の締めくくりの自己研鑽として、1986年8月4日〜15日の2週間のNTL主催でBethelで開催されたTraining Program In Laboratory Education(TPLE)に参加しました。

 UMASSでの授業は7月末に終了しており、1ヶ月ほどの期間が空くことをいいことに、家族(家内と、7歳の娘、5歳の長男、3歳の次男)で、アメリカ1周キャンピングの旅を計画(と言っても行き当たりばったりの旅ですが)して実行しました。この話は、また別の機会にできればと思いますが、マサチューセッツを出発して、フロリダ(ディズニーワールドにキャンプ場があるのです)まで下り、テキサスを抜け、ロッキー山脈を縦断し、五大湖を抜け、カナダに入り、ケベックからマサチューセッツに戻るという、「35日間全テント泊10000マイルの旅」を完結させました。私たち家族にとっては、とても大きく大切な体験になっています。

 さて、TPLEの話しに戻りますが、参加者は、過去にNTL主催のTグループに参加した経験者で、いろいろなフィールドで活躍しているメンバー12名が世界各地から集まって来られました。アメリカはもちろんのこと、カナダ、アイルランド、インド、コスタリカ、そしてつんつんの日本の6カ国からの参加でした。

 2週間にわたるプログラムは、図に示されているとおりの内容でした。実習の開発などを行い、その実習の実施を通してラボラトリーの教育実践力を身につけるプログラムと、Tグループのトレーナーの役割をとりながら非構成グループのトレーナーのスキルを身につけるプログラムの2つがミックスされた内容で構成されています。

 初日に、大枠が示された日程表が参加者には渡されました。午前中の45分は、セオリーセッション、午前の後半(セオリーセッション後)と、午後の前半、夜の時間帯は、プラクティスセッション(Pセッション)として実習開発をして実施しフィードバックを行うセッション、もしくはTグループのトレーナートレーニングセッション(T−O−Tセッション)が配置されていました。8つのセオリーセッション、PセッションとT−O−Tセッションがそれぞれ10セッション行われました。午後の後半にはFree Timeがいつも入っていました。

 特に、T−O−Tセッションの運営にとても興味をもちました。T−O−Tのセッションが始まる5〜10分前にトレーナーのロールをとる二人がスタッフ二人と面接をします。その時には、今のグループの状況を簡単に描写することと、それぞれのトレーナー役の人がどんなふうにグループで過ごしたいかを伝えるのです。そして、Tグループが始まり、45分後に10分の休憩を取ります。その時にトレーナーの役割をとっている二人はTグループを観察していたスタッフからコーチングを受けるのです。その間にスタッフはロールをとっている人を励ましたり、フィードバックを返したりしてくれます。少なくとも、私の時にはそのようにしてくれました。メンバー役の人たちはコーヒーブレイクで休憩し、10分後TーO−Tのセッションが再開されます。

 後半の45分のT−O−Tセッション終了後、スタッフも加わり14人が今の介入はどうだったのかといったフィードバックセッションが、スタッフのペースで運営されました。

 もう一つ、T−O−Tセッションをヴィデオテープに録画することも、スタッフによって行われました。今回初めてのように聞きました。当時のVTRですから、とても大きなVHS機でした。それらのデータは、あまりシステマチックに活用されなかったのですが、休憩時間にリプレイをお楽しみ的に見るという形で利用されました。

 参加してみて、やはりセオリー・セッションがしっかりとプログラム化されていることが印象的でした。日本では、体験すること、Tグループのセッションの時間が多くとられ、参加者が概念化する時間が余りとられていない印象をもっていますが、こうしたセオリー・セッションが含まれていることはNTLでは理論やモデルの理解も大切にされていることがよくわかりました。以前に参加したTグループも今回のTPLEプログラムも、終了後のアンケートの項目には必ずスタッフは概念的な理解を促進する働きをしたか?とか、理論的・認知的な理解が深まるプログラムであったか?などといった項目が含まれています。

 さらに興味深かったのは、全プログラム終了後にスタッフからの参加者一人ひとりに対する評価タイムがあるということです。全プログラムが終了する前日のendingの時間に、一人ひとりの参加者と二人のスタッフと10分から20分くらいの面接が行われました。その時には、スタッフからフィードバックが返される時間であり、メンバーを讃えたり、注文を付けたりして、評価が行われたことを記憶しています。その時には、このTPLEのプログラムの中で疑問に思っていることや、スタッフの言動について気づいたことを伝えたり、この研修の中で自分のトレーナーとしてのあり方を自由にフィードバックを求めることができるのです。

 これはすべてのTPLE参加者メンバーにとって大切な、また意味のある時間となっているようでした。また、スタッフがラボラトリー教育の実践家として優秀と認めたメンバーに対して、NTLのフェローになるための特別プログラムであるTAP(Trainer Apprentice Program)への参加をスタッフから促されるようでした。このようなスタッフと共に過ごす時間は、個人的に、とても大事な時間として過ごせると思うのですが、最後のTAPへの参加等が促されたかどうかが、面接後参加者相互で気になり、面談終了後に面談語の参加者に近づき、参加者相互に「お前は認められたか?」といったことに関心が向けられることから評価を気にさせる面談にもなっていると感じました。

 ちなみに、つんつんは「認められ、次に進むように推薦する」との声をかけていただきました。となると、やっぱり嬉しいですよね(笑´∀`)!!
 実は、このときのスタッフの一人とは、20年後にNTLを訪問する機会(同僚のNさんの米国滞在時に)にお会いするという思いがけないつながりを感じることがありました。(つづく)