プロセス・エデュケーションが必要な訳(04)

私たちの学習の領域には、ベンジャミン・ブルーム(1956)によると「教育目標のタキソノミー(分類学):“Taxonomy of educational objectives”として、3種類の学習領域があることが示されています。
(1)認知的領域(cognitive domain)
一般的に知的な理解、概念的な理解が深まる学習領域をさし、組織的原理として精神的操作の複雑化であると考えられ、目標は知識→理解→応用→分析→統合→評価というかたちで高次化していくと考えられています。
(2)情意的領域(affective domain)
学習に対する意欲や態度であり、組織的原理は価値・態度の内化といわれ、目標は受容(注意)→反応(興味)→価値づけ(態度)→価値の組織化(人生哲学)→価値または価値複合体による個性化(ライフスタイル)というかたちで高次化・内化すると考えられています。
(3)精神運動的領域(psychomotor domain)
モータスキル、運動、技術にかかわる学習領域であり、組織的原理は神経系と筋肉系とのあいだの協応の達成が高まることです。デイヴの枠組みでは、模倣→巧妙化→精密化→分節化→自然化と高次化するとされています。
このような三種類の領域において、学習を達成し、個人の力を育成することを考えると、いわゆる座学による教授学習形態では不十分であることはおわかりいただけると思います。特に(2)の上位的領域に関して、学ぶことへ意欲ややる気、また自分自身の生きるありようを身につけるためには、他者の話をただ聞き、インプットするだけでは不十分でしょう。他者とともに、活動をともにし、その人の姿を見たり、自分の姿を見たり、また他者と関わる体験を通して自分自身が揺さぶられたり、確信をもったりしながら、自分の物事や人への態度を形成していくことになるのでしょう。
さらに、(3)精神運動的領域の学習に関しては、さらに体験を通して学ぶことの必要性は十分理解されるでしょう。自動車免許証をとろうとする場合には、最初に道路交通法やメカニカルな知識の理解のために、座学的な講習を受けたとしても、実際に実地体験がない人が車を適切に動かすことが難しいことは理解できるでしょう。運動技能は、やはり体験を通して学ぶことが必要になります。
(1)認知的領域においてさえ、座学で一方的に知識の伝達、また文献などを読み研究を進めることで知的理解は深まるにしても、そうして獲得した知識を他者との交流を通して、確かなものになっていくのだろうと思います。
これらの理由より、体験を通して学ぶ「プロセス・エデュケーション」は欠かせない学習アプローチとよべるのではないでしょうか?また、体験学習の循環過程の考え方には、体験を通して学ぶことだけでなく、認知的に学習することを好む人たちにも、また好まなくても認知的な学習の必要性も、逆に重要な視点としてもつことが考えられています。このことは、また別の機会にお話ししたいと思います。