易経に学ぶファシリテーション(19)
■ファシリテーターとしての第五段階「飛龍(ひりゅう)」
私に「飛龍(ひりゅう)」の時代があったということ自体がおこがましいのですが、あえてあったと考えるとぐらいでお読み下さい。
あっこちゃん(2012)では「成長を続けてきた龍は天かける飛龍になり、雲を呼び、雨を降らせる能力を発揮し、大きく世の中を循環させて人々を成長させます」と書かれています。「飛龍」の時代は、何をやっても順調に進み、次々とものごとが実を結ぶ進んでいく時代だそうです。
「飛龍(ひりゅう) 天に在り。大人(たいじん)を見るに利(よ)ろし。」飛龍の時代は、陽の極みの時で、一生懸命やらなくてもトントン拍子で進むのです。そのようになると、人々はその安定にあぐらをかき、先を見通す力を失っていくのです。飛龍にとって「大人(たいじん)(師)」とは、まわりのすべての人、すべてのものごとだそうです。基本の姿勢を失わないために、常にまわりのことに学びなさいと教えられているのです。まわりのものごととは、人や出来事、大自然、歴史や古典などをさしているそうです。将来どうあるべきかを正しく見極めること、そして「大人から学ぶこと」ができれば、この飛龍の時代も保たれるのです。
南山短期大学から、南山大学に移籍してきたのもこの段階で大きな転機になったことと思います。ちょうど、南山大学人間関係研究センターを基地に、ラボラトリー方式の体験学習の可能性を広げていった時期でもあります。特に、学校教育現場の先生方との交流がありました。特に、チュッ学校教育現場で、生徒たちの学習態度や生徒と生徒、生徒と教員との人間関係にいろいろと問題を感じていた先生方が南山大学に集まり、これまで成人の教育として実践していたラボラトリー方式の体験学習の学校現場への応用実践の試みが開始されたのです。短期大学の教育から学部教育へとラボラトリー方式の体験学習の実践応用の展開、そして、中学校をはじめ学校教育現場への応用実践研究の充実が、私自身のファシリテーターとしての可能性を広げてくれたのです。
大学に移籍後、5年後に人間関係研究センターのセンター長を拝命して、これまでの実践をさらに充実したものにすることができました。特に、中学校における学校教育の改善活動が実り、その実践を日本体験学習研究会全国大会で発表されたり、そうした活動実績をもとに、2005年度の文部科学省「平成17年度・18年度文部科学省『大学・大学院における教員養成推進プログラム』として「豊かで潤いのある学びを育むために―ラボラトリー方式の体験学習を通した豊かな人間関係構築を目指して―」をテーマにプロジェクトが採択されたのです。このGPは、2005年から2年間、そして引き続き、「平成19年度・20年度文部科学省『専門職大学院等教育推進プログラム』として「教え学び支え合う教育現場間の連携づくり~ラボラトリー方式の体験学習を核とした2つの連携プロジェクト~」を2007年から2年間と、計4年間にわたり、文部科学省の補助金を得て、ラボラトリー方式の体験学習を全国展開することができたのです。また、GPの活動の一環として米国NTL主催のワークショップセミナーに参加する機会があったことも、新しい刺激を受け取るにはとても重要な機会になりました。
こうした活動は、今から考えると「飛龍(ひりゅう)」のステージであったと言ってもいいのかもしれません。それらと同時期に、南山大学大学院人間文化研究科教育ファシリテーション専攻が設立され、専攻主任として、その後研究科長として仕事をさせて頂きました。教育ファシリテーション専攻での研究と実践が、成人教育におけるラボラトリー方式の体験学習の大切さと流れを作り出してくれたのだろうと考えられます。
また2004年、FAJ認証記念式典で、オープニングで「教育とファシリテーション」の講演をさせていただき、日本ファシリテーション協会の人々、特に中部支部の方がとも深い交流が生まれていきました。その関係は今も脈々とつながっています。
さらに、同時期ですが、2006年には、日本体験学習研究所(まだ任意団体ですが)を設立し、大学院教育ファシリテーション専攻修了生の方々に、社会貢献として活動して頂けるような機会をつくり、私だけでなく研究員のみなさんにファシリテーターとしての力をつけてもらえるような努力もしてきました。