Tグループとは No.083 誕生から75年さらなる発展のためのパラダイムシフトに向けて:ナラティヴ・アプローチ(Narattive Approach)とは(11):Kouさんの9つの視点(Part_8)

(9)カウンセラーの課題は、クライアントに以前より満足を与え、感じ入らせるようなプロットを構成できるよう援助することである

 「カウンセラーは、その人が自分自身についてを、別の視点、解釈、意味づけから語るように励ますことができます。これは、今まで語られることのなかった挿話を引き出すことです。そのような挿話の意味づけや関連する出来事を、そこからまた引き出し、別のプロットを太くしていくことができるというのです。」(国重,2013)

 「失敗、挫折、不運も、その人の人生の豊かさを物語っているのです。そして、そのストーリーを、自分がさまざまな問題や苦難を乗り越えてきた、または背負ってきた人であるという視点で語ることもできるのです。それをオルタナティヴ・ストーリーということができます。」(国重,2013)

 AIアプローチの中では、自分が努力して取り組んできたことや成功裏に終えられたことを大切な体験として思い起こし、その体験を通して学んできたことや潜んでいる価値観、そのことが実現した要因などを問いかけを通して語りながら、自分のもつ「イキイキと生きることができる源=ポジティヴ・コア」を探求します。

 しかし、必ずしも、誰もが自分の人生の中で成功した体験がすぐに語れるわけではありません。そのような個人のもつ体験の中での行動を手がかりに、その人が「イキイキと生きることができる源、価値観」を会話を通して探求するナラティヴ・アプローチの哲学や方法論はとても役に立つのではないかと考えています。

 Kouさんは、「ナラティヴ・セラピーを理解する上で、『何をするのか』という側面と、『なぜそのようにするのか』という側面の双方が必要となりますし、実践していくためには、『どのようにそれをするのか』という側面が重要になります。」と記しています。私たちは、ナラティヴ・セラピーを語るだけでなく、ナラティヴ・セラピーを実践する技能を持つ必要があります。

 ナラティヴ・セラピーをさらに理解するためには、理論の学習と併せて「プラクティス!プラクティス!プラクティス!」の必要性が強く言われています。ナラティヴ・セラピーにご関心を持たれた方は、お話だけでは無く、実践を大切にして学んでいってください。

 日本では、NPACC(ナラティヴ実践協働研究センター:https://npacc.jp)では、実践的な講座など幅広く学ぶ場が準備されていたり、ナラティヴ・セラピストを育成するためのトレーニングコースも準備されています。また、JIEL(日本体験学習研究所:https://jiel.jp)でも、国重浩一(Kou)さんを招いてのワークショップを開催しています。(つづく)