Tグループとは No.079 誕生から75年さらなる発展のためのパラダイムシフトに向けて:ナラティヴ・アプローチ(Narattive Approach)とは(7):Kouさんの9つの視点(Part_4)

(5)自分自身が同盟できる(タッグを組める)ような、矛盾しているオルタナティヴなディスコースが必ず存在する

 Kouさんは、「私たちは、人生におけるさまざまな問題を、その時代、文化、地域に存在するディスコースよって、解釈していきます。」そして、「この解釈に用いられるディスコースは大きな影響力を持ち、それを、支配的なディスコース(ドミナントなディスコース)と呼ばれます。」と述べられています。

 支配的なディスコースとは、たとえば、「学校に行くこと」「結婚すること」「離婚すること」などを指します。支配的なディスコースに沿った生活をできている時にはディスコースの圧力を感じることはないでしょうが、生活すべてにおいて、常にその期待に添うことは無理なことです。

 ナラティヴ・セラピーでは、支配的なディスコースがもたらす期待に添えないで窮地に追い込まれる時、そのディスコースがもたらす解釈が「真実」であると見なす必要はなく、他の解釈をもたらしてくれるディスコースを探すことができると考えています。

 往々にして、そうしたディスコースには、相反するようなディスコースがいくつもあるのではないでしょうか。例えば、「人の気持ちに添えるような人である」ことと「自分の気持ちに正直に生きる」こと、「営業マンは、誰にも負けずに売上げ成果を上げる」ことや「営業マンが協力して成果を上げる」ことなど、行為とディスコースは、1対1での対応だけで無く、かなりさまざまなディスコースが考えられます。矛盾するであろうさまざまなディスコースを点検しながら、自分自身の存在を大切にすることができるディスコースを探し、語れるようになることはとても大事なことになるのです。

 このようにナラティヴ・セラピーを理解してくると、教育やチームづくり、組織づくりの中にあって、問題を感じている個人が、自分自身をチームや組織の中にあるディスコースに埋め込もうとするのでは無く、そこにいる人々がともにチームや組織の中でイキイキできるディスコースとはどのようなディスコースかを探求する会話が生まれることが大切になるのだろうと考えています。(つづく)