Tグループとは No.019 南山短期大学人間関係研究のセンターで公開の社会人対象のTグループ講座がスタートする

 1973年4月に南山短期大学に人間関係科(初代学科長故R.メリット)が創設されました。JICE(立教大学キリスト教教育研究所:所長故柳原光)の支援のもと、教える-教わる従来の教育から学習者の体験を通して学ぶ「Tグループ(Tとはトレーニングの略)」をベースに、学習者も教師も共に関わり合いその関係(プロセス)を大切にしながら学ぶ冒険的な高等教育が誕生しました。

 私は、開設より4年後の1977年に非常勤講師として、南山短期大学人間関係科(愛称:ニンカン)の教育に携わるきっかけをいただきました。ニンカンの専門科目は基本的にティームティーチングで行われ、授業の前後に丁寧な授業ミーティングが開かれ、絶えず新しいプログラムづくりに挑戦してきました。例えば、授業展開の中で、「フィールドワーク」といった科目名で、特別支援学校や授産所など、学生を受け容れてくださる施設・機関に一年間学生が水曜日一日通いながら(現場でさせていただける仕事をしながら)人間理解や人間関係の理解を深める授業など考案し実施してきました。体験学習やティームティーチングに慣れない私も、授業を共に創る体験を通して、年齢や経験年数に関係なく開かれた同僚性が生まれ、学生と教師も巻き込んだ学習共同体づくりの中に没入することができました。

 ちょうど私が非常勤講師として勤務し始めた、学科開設から5年目の1977年9月に社会人を対象にした研究講座を開催するための人間関係研究センターが創設されました。当時の副学長故O氏は「医学部の教授が大学での研究・教育と大学病院での臨床活動の両立により素晴らしい研究成果をあげるように、生きた人間関係を研究する人間関係科のスタッフも大学内にとどまらず社会現場とつながる研究の場が必要である」と意義づけて、センターの創設と活動を積極的に支援されたのでした。

 センター開設にともない、社会人研修として「一般研修」として人間関係講座、「継続研修(初期は専門研修とよぶ)」として「自己啓発」、「グループ成長」、その他に「特定研修」を開催し始めました。

 つんつんが米国留学より帰国した翌年、ニンカン創設10年後の1987年10月に「継続研修」の一環として、東海地区で初めてTグループによる人間関係トレーニング(Tグループ)がH先生・N先生・故Y先生・つんつんの4人のスタッフにより、一般公開で社会人対象のTグループが開催される運びとなったのです。立教大学のJICEのメンバーの支援をいただきながら、1973年学科創設よりほぼ15年、学科の中心的な科目としてTグループを実施してきた教員としては、地域の人々を対象に南山短期大学がTグループの講座開催の基地となるといった記念すべき年となったのです。

 あれから、専門性を要するTグループ開催は、2020年、南山短期大学人間関係科の教員が、南山大学に移籍し、南山大学人間関係研究センターも引きつづき設置されたことにより、ニンカンの財産は継承されることになったのです。南山短期大学から南山大学人間関係研究センター主催のTグループへと脈々と受け継がれ、昨年度第31回を迎えるまでになっています。現在、日本においてTグループを開催できる大学の研究機関は他にはないと思われます。2015年3月末に、南山大学を退職した身としては、さらなる南山大学人間関係研究センターのラボラトリー教育の実践が発展することを願うばかりです。

 つんつんとして、2015年4月に一般社団法人日本体験学習研究所(Japan Institute For Experiential Learning:JIELジャイエル)を開設して、引きつづきラボラトリー教育実践の民間の基地となるべく活動をスタートしたのです。JIEL開設より、丸5年が経過し、Tグループと、Tグループのトレーナーを養成する機関としてやっと少しだけですが、社会の皆様より認知していただけるようになり始めています。

 これまでのTグループをこのようにして振り返りながら、新しい実践的研究成果を導入しながら、Tグループを中心にしたラボラトリー教育の実践研究を展開していきたいと考えています。ただ、そのためには多くの社会で活躍されているみなさま方のご協力が必須です。ぜひ、このように公開しています記事に関心をお持ちの方は、ぜひJIELの活動にもアンテナを張って頂き、講座に参加していただいたり、研究会に顔を出していただいたり、SNSなどを通してお仲間になっていただき、一人ひとりが生き生き暮らすことができる社会づくり、コミュニティづくりに向けて、K.Lewinがめざしたアクションリサーチに共に取り組んでいきたいと考えています。今後ともよろしくお願いします。(つづく)