ラボラトリー体験学習を用いた参加型研修デザインのためのフロー図

2013年1月17日18日と、東京都清瀬市にある日本看護協会主催の「施設内教育ブラッシュアップセミナー〜参加型研修を極める〜」を担当してきました.アシスタントとして、JIEL(日本体験学習研究所)研究員の杉山郁子さんと、南山大学教育ファシリテーション専攻M2の古田典子さんに同行していただきました.
参加者は、57名。5人か6人の、10グループ。
プログラムの流れは、参加者のねらいの明確化と共有化のプログラムから始まり、参加者自身で「研修プログラム設計で大切なことは何か」を考えていただくことを行いました.
午後には、「コンテントとプロセス」「体験学習の循環過程」などの基本的なお話をしてから、ラボラトリー体験学習の一つの実習、問題解決実習「ナースをさがせ」を実施しました。
午後の後半は、各グループで、「研修企画立案」を行っていただきました。
翌日の午前、1時間ほど準備の時間をとり、その後2つの部屋に分かれて、5グループずつ、計画立案した研修プログラムを発表していただきました。
なかなか興味深い研修プログラムがプレゼンテーションされました.
二日目の午後は、津村から研修のデザインに関して少しコメントをさせていただき、発表後のフィードバックをもとに、研修プログラムの修正を行いました
その際の、津村のコメント時に作成した手作りの研修デザインを考えるためのフロー図を紹介させていただきます。
特に、デザイン時に、留意するとよいことを、箇条書きですが、記してみます。
下に、その手書きフロー図を掲載します。
DSC00993.JPG
留意点
①「エントリー」と「リ・エントリー」を意識した研修プログラムが含まれること
 「エントリー」とは、日常生活から、研修(ラボラトリー)の場に身をおくことができるようにすること。
  →ねらいの明確化や共有化、また参加者相互に知り合う場を作ることなどを通して研修への参加の準備ができるようになることです。
 「リ・エントリー」とは、逆に、研修(ラボラトリー)から日常の現場にもどる準備をすることです。
  →研修での気づきや学びを整理したり、日常生活での現場で生かしてみたいことなどを明確にして研修の場を出て行くことです。
②ねらいの擦り合わせをすること
 教育スタッフ(ファシリテーター)があらかじめ準備しているねらいと参加者のねらいとをすりあわせて、ともにこの研修の場で何を学ぼうとする場かを明確にする時をもつことです。
③グループを作る時にその時の意図を明確にすること
 参加者は、同質か異質か?知り合いか未知か?などを配慮したり、研修の中でグループを固定するのか自由に変更するのか?などの配慮は、研修のねらいと関連づけて検討しておく必要があります。グループのメンバーを固定することによって、グループの発達・成長の視点も学びに組み入れていくことができます。
④チェックインをすること
 グループ活動が始まる前には、できる限りチェックインの機会をもつようにするとよいでしょう。ともすれば、すぐに課題(コンテント)に走り出しますが、お互いの関係が少しでも生まれていることは、後の仕事に対しても、また実習実施後のふりかえりの時にも効果的に働くでしょう。
⑤実習の種類の吟味
 個人でもグループでも、どのような内容の体験学習(実習)を行うのか?参加者にとって、容易すぎないか?難しすぎないか?いずれにしても、参加者にとって、直面する体験に対して、抵抗感が生まれる可能性があります。その抵抗感を、適切にセットする必要があります。優しすぎず、難しすぎずです。
 ほどよい課題を乗り越えることは、参加者にとっても達成感をもったり、できなくとも、ふりかえりを行うことで、自分たちの課題として受け入れることが容易になるでしょう。
⑥ふりかえりの時間をしっかりとること
 実習体験などをした後には、できるかぎり丁寧なふりかえりの時間をとりましょう。ふりかえりとは、体験学習の循環過程でいいますと、《指摘》→《分析》→《仮説化》のステップのすべてにわたるワークです。そのためには、ファシリテーターからのといかけが大切になります。その問いかけに変わるものとして、ふりかえり用紙が使われているのです。こうした問いかけ(ふりかえり用紙の項目)が研修のねらいと一貫しているかどうかのチェックが必要です。
 特に、参加者の気づきや他の参加者からフィードバックの授受をする際には、「いまここ」でのデータをもとにすることに注意をする必要があります。お互い知り合いの参加者同士の場合には、これまでの見方や偏見が作用する可能性がありますから注意をする必要があります。
⑦講義の順序と内容について配慮すること
 講義をしようとすると、どうしても教育スタッフ(ファシリテーター)が前もって伝えたいことを一方的に伝えてしまうことが起こります。順序は、体験後にたとえ講義をしたとしても、参加者にとっては、とって付けたような感じを覚える可能性があります。参加者に新しい概念や用語を伝えたいならば、または新しく身に付けて☆スキルなどの場合には、あらかじめ先に講義を入れる方が効果的かもしれません。
 体験後(ふりかえり後)の講義(ミニレクチャー)をする場合には、できる限り、参加者の体験後(ふりかえり後)に気づき学んだことをインタビューなどを通して、語ってもらいながら、その気づきや学びに関連付けながら話ができると参加者にはきっと納得間が生まれるでしょう。そのためにも、ファシリテーターははばひろい知識や経験を備えていく必要があります。
 講義やコメントでは、気づきや体験を引き出したり、広げたり、深めたり、また参加者相互の気づきや学びをつなげたりする働きになることが大切です。
⑧日常生活での学びを試みるフォローアップの場づくり
 研修で気づき学んだことを試みようとする日常生活(現場)において、やはりその取り組みをサポート(支援)してくれるかかわりが必要になります.それは、同僚であったり、上司であったりします。適切なフィードバックをしてもらうためにも、参加者がどのように成長したいと考えているか、ゴール(目標)を周りの人たちにも理科いてもらっておくことが大切です。単に周囲の人にフィードバック(評価)をしてもらうという機会だけでなく、目標を理解してもらう機会が大切だと思います。
以上、長くなりましたが、昨日の二日間の研修を通して、描いたフロー図の説明をさせていただきました。
何か、読者のみなさんに参考になれば、幸いです。