易経に学ぶファシリテーション(18)
■ファシリテーターとしての第四段階「躍龍(やくりゅう)」
基本と技、実力を身につけた龍が兆しを見極め天に舞い上がるタイミングを待つ段階だそうです。「あるいは躍(おど)りて淵(ふち)に在(あ)り。咎(とが)なし。」あっこちゃん(2012)は、この段階を「躍龍(やくりゅう)」と名付けています。
大きな飛躍の機を捉えるために、ある時には跳躍して天に舞い上がろうとしたり、ある時は潜龍がいた淵に戻ってはじめに立てた志に立ち戻ったりしなさいと。そうすれば、あやまったりすることはないでしょうという意味だそうです。到達するための志を前にしてスランプに陥ることがあるということです。それは、好調と不調の波があり、不安定に大きく上下する時期でもあります。あっこちゃんは躍龍はこの不安定さがいいのですとも言っています。躍龍は、何度かのスランプを乗り越えながら、一層の力をつけて、落ち込みをバネに天に舞い上がり、「飛龍(ひりゅう)」となるのです。
前回、私がラボラトリー方式の体験学習のファシリテーターとして自由に振る舞えるようになったきっかけとして、留学経験と、改めてのNTL主催のTグループへの参加体験、そして留学の最後に参加したトレーナートレーニング体験です。これらの体験は、津村のファシリテーターとしての力量とグループや人に臨む姿勢を育ててくれました。
留学先のマサチューセッツ大学アムハースト校では、ヒューマニスティック・エデュケーションの一つのプログラムとしてのセルフサイエンスを学んできました。留学した最初は、Tグループなどのグループ体験を研究するつもりでしたが、訪ねて行ったG.ウェインシュタイン教授は、「もう、おれはグループはやめた!」との一言。そして、「グループを研究したければ、隣の研究室の教授を紹介するよ。」と。これはあわてました。でも、やはり初志貫徹、G.ウェイシュタイン先生から学ぼうと、方向転換をしたのです。それが、セルフサイエンス・プログラムでした。
このプログラムは、学部教育でも、大学院教育でも実践されていて、G.ウェインシュタイ教授が開発した「エデュケーション・オブ・セルフ」というコース名でプログラウ展開されていました。G.ウェインシュタイン先生とは、いろいろな問題がありました。なかなか堅物の先生で、「なんでもいいから質問があれば、してもいいよ!」と言ってくれたので、いくつかの問題と感じることを津村が話すと、「君と話をすると、コンフリクトを感じるから、もう帰れ」的な発言。これまたあわてましたが、ドクターコースに在籍していた女性の大学院生ジュリーに助けられ、無事一年間学ぶことができました。
この大波を体験する一年間は私にとっては、ラボラトリー方式の体験学習の可能性をたくさん感じることができた一年でもありました。結局、このコースを体験することで、ラボラトリー方式の体験学習の応用版を修得し、学生や社会人などいろいろな方がたに応用実践することができるスキルと知識を習得し、体験学習の循環過程の視点のバリエーションの豊かさを学ぶことができたのでした。
NTLでのトレーナートレーニングの2週間のプログラムの参加体験も私のファシリテーターとしての幅を広げてくれました。それは、留学後、Tグループに臨む姿勢を本当に柔軟にさせてくれる体験でもありました。