易経に学ぶファシリテーション(16)
■ファシリテーターとしての第二段階「見龍(けんりゅう)」
潜み隠れていた龍が、ようやく時を経て地上に現れる「見龍」の時代です。「見」という字には、見て学ぶ、見習うという意味を含んでいるそうです。この時代、物事に向き合う姿勢、行動の基本の「型」を見習って、しっかりと身につけていくことが大切になります。師の癖まで似てくるほど大人をコピーすることが、基本の型のマスターだとあっこちゃんは書いてくれています。ただ、ある程度マスターしたら、あたかもやれるようになったと錯覚に陥り、「これは自分のやり方に合わない」などと自分勝手な考えが生まれ、型が崩れることが起こるようです。中途半端な時点での挫折は禁物です。
こうした時代を、私も歩んだように思います。南山短期大学人間関係科に着任した春から、授業をともにする人たちとのスタッフミーティングで先輩諸氏がどのように考え、どのように振る舞っているのか、見ながら修得していきました。特に、Tグループ(人間関係トレーニング)というラボラトリー方式の体験学習のコアとなるプログラムでのファシリテーター体験では、参加者・対象が学生だけでなく、社会人の人々が集まるTグループのセミナーにも、よく連れ出してもらいました。これは、私の今の宝物の体験です。その師は、中堀仁四郎氏です。私がTグループに関わりだした初期の頃のTグループには、本当にいつも中堀先生とともにトレーナー(ファシリテーター)体験をさせていただき、学ばせてもらいました。参加者の方からは、中堀仁四郎二世かといわれるぐらい、時には中堀さんのコピーかと言われるくらい、グループの中での津村の発言から所作に至るまで似ていた時があったようです。確かに、自分でも滑稽に思うほど、話し方、グループの中でのいすに座る際のすわり方さえ、似ていたのを今でも思い出します。
そのほかにも、大学の学内の授業は、複数の教員が担当するチームティーチングで、南山短大人間関係科の授業は行われていましたので、諸先輩がたの教え方やふるまい方を見よう見まねで習い、授業内での津村の振る舞いや、学外合宿での学生とのやりとりなどを学ばせていただきました。そうした中で、知らず知らずのうちに、どうも型にはまった問いかけをするようにもなっていたようです。これがしばらくしてから、私のファシリテーター、教員としての姿勢を新たに考え直すきっかけを提供してくれることになったのです。それは、学生からの私への「渇」といったらいいかもしれません。