易経から学ぶファシリテーション(06)
■グループに「不易」を観るとは■
前回は、「変易」のことを書きましたが、今回は「不易」のことに触れます。「変易」「不易」があらわす、循環・不変のサイクルは、すべての事象に通ずる栄枯盛衰の道理と言われています。グループ体験の中での「変易」が個人のプロセス、対人関係のプロセス、グループのプロセスとしてとらえるならば、その変化の法則性、個人の成長過程やグループの変化過程が「不易」としてとらえることができるながら、ファシリテーションには大きな視点となるのは間違いがありません。
たとえば、個人が自分の体験を語る変化過程には、4つのステップがあるというお話があります。第1ステージは「断片的な要素を羅列する初歩的なステージ」、第2ステージは「状況まで語ることができる状況的ステージ」、第3ステージは「パターンとして語ることができるパターンステージ」、第4ステージは「自分のパターンを修正・変更できるパターンステージ」です。(プロセス・エデュケーションを参照)
グループの変化・発達段階も、さまざまな研究者が多くの研究をレビューしながら、提案しています。シリーズ(04)で、紹介したタックマン・モデルも一つです。その他に、たとえば、ラコウシア(Lacoursiere,1980)は、さまざまな分野での200にのぼる集団発達研究をレビューして、下記のような発達モデルを提唱しています。彼は、集団の発達過程を社会的情動的(social-emotional)もしくは課題関連的(task-relatied)行動にしたがい、5つの段階に分けて説明しています。それらの段階は図?に示されています。「導入(orientation)」-「不満足(dissatisfaction)」-「解決(resolution)」-「生産(production)」-「終結(termination)」の段階として命名しています。
グループは成長する・発達するという視点をもてば、今のグループの状況をよく観て、そのグループに働きかけるファシリテーションが有効になるでしょう。グループのメンバー間において、気持ちの上でお互いに懸念を強くあり、メンバー相互に不信な思いが渦巻いている中で、何か生産性を上げようという意図で働きかけてもそのファシリテーションは有効にならないでしょう。早く実りが得たいと思って、凍った冬の題意に種をまいても秋に実りが得られないがごとくです。春に種をまくために冬の大地を滋養に富んだ豊かな土壌を作る、雪に覆われた静かな時ように、今のグループの状況で一人ひとりの思いの違いや関係のありようを丁寧に吟味し、関係性が熟成するように豊かに育むためのファシリテーションが大切になるということを教えてくれています。