Tグループとは No.042 グループは変化する:Jenkins(1964)のモデル

 Jenkins(1964)は、Lewinの主張を受け継いでグループによる学習プロセス、とりわけ新しい自己発見のプロセスについて以下の4つの仮説を示しています。

1.個人は、グループ状況において基本的な安全(security)の感覚をもつ。
2.個人は、不均衡(disequilibrium)の感覚を経験する。
3.個人は、自分自身に対する挑戦(challenge)として何が起こっているかを見ようとする。
4.その挑戦は、その個人が発見(discovery)のプロセスをスタートするために使われる。

 Jenkinsは、個人が変化・成長するためには、最初に、その個人にとっての安全感と不均衡感の間にかなりデリケートなバランスが起こる必要があると考えています。そして、彼は、何らかの動揺なしに新しい行動の選択や変化は起こらないが、安全感との均衡が保てなくなると個人は変化に向けて行動を起こさなくなると考えています。安全と不均衡の感覚が学習者にとって耐えられる程度のバランス状態であるならば、その個人はグループもしくはメンバーの誰かに新しい方法でかかわってみたいと思うようになるのです。

 彼は,参加者が新しい行動を修得するということは、自己発見の挑戦によって引っ張られるのであって、第三者による外側からの力によって強要されるものではないと考えています。

 Jenkinsにとって、この“自己発見”が彼のモデルの中心的なテーマでした。このことは、人間関係トレーニングに参加する人に対しても、またファシリテーターに対しても大切な視点を提供してくれています。

 彼は、「本当の危険は、 …個人に何かを発見させようとする時であり、発見させようとして第三者(ファシリテーター:つんつん追記)が学習者に発見することは何かを教える (tell)時である。そのことは学習者自身が発見することを否定することになる。」とまで述べています(Jenkins,1964)。

 彼の重要な主張は、人間関係トレーニングを通して新しい学習が起こるプロセスとあわせて、学習者が新しい学習内容の持ち主(ownership)になり得るかどうかなのです。

 このことは、特に「教育することは教えることだ」という教育観をもつ教育者が耳を傾けるに値するものではないでしょうか。なぜなら、人々は自分が発見したいと考えていることや発見すべきことを教えられた(told)時は、学習者の学習する喜びや成功感を減少させることになったり、失敗を感じさせたり、時には恥ずかしささえ感じさせることになるかもしれないのです。

 たとえその発見(気づいて欲しいこと)が教育者から見て重要なものであっても、学習者自身が体験の中から見つけ、学習者自身によって解釈を行わない限り自分のもの(own)とならない可能性があるのです。発見した喜びのインパクトは弱まることになります。

 Tグループとは、このような学習のプロセス、自己発見のプロセスが起こるようなグループに変化成長するようになっていくことであり、人間関係トレーニングにおけるグループの1つのテーマと言えるでしょう。(つづく)