Tグループとは No.031 長く話し続けてきているつんつんの「人間関係とは」

 私たちは、日常、人と出会い、人とかかわりをもちながら生活しています。そのように人とかかわること、すなわち「人間関係」っていったい何なのでしょうか。読者のみなさんの中には、もしかすると人とかかわることがなければ楽なのにと思う人もいるかもしれません。またある人は,人といることは楽しいとか感じたり,同僚との関係や上下関係が難しいと思ったりと,人間関係に対する感じ方や考えが浮かぶのではないでしょうか。

 しかし,もし人とのかかわりがないとしたら、私たちはどのような生活をするのでしょうか。かかわりが全くないということを想像してみると、自分の名前を呼んでくれる人がいないなら、名前すらも不要になるかもしれません。私たちは、出会いがあったその瞬間、たとえば「はじめまして」と挨拶したとき、「私とあなた」を意識し始めるといってもよいでしょう。

 すなわち、人との出会いがあったときに、その人間関係の中で「わたし」が生まれると考えることができます。そして,その関係が続く中で,相手とのかかわりの中で喜びがあったり悲しみがあったりといろいろな感情や言動を経験し、それらの体験を通しながら、私が育っていくと考えられます。

 他者との関係の中で、せっかちな「わたし」になったり、人任せな「わたし」になったり、また私がやらなければと責任感が強い「わたし」になったりと、さまざまな「わたし」が生まれ育っていくことになります。

 読者のみなさんも、かかわっている人や場所(たとえば職場での「わたし」や家族の中での「わたし」など)によっていろいろな「わたし」がいることを理解することは容易なのではないでしょうか。

 さらに大切なこととして、人間関係(かかわり合いの中)で「わたし」が生まれ育てると考えるならば、逆に「わたし」が相手とかかわりをもちはじめたときに、「わたし」が生まれ育つとともに、実は「相手」を誕生させており、そのかかわりが続く中で「相手」を育てていることになるといえるのです。いわば、「わたし」が目の前の「あなた」にどのようにかかわるかによって、「相手」を値打ちある存在にしたり、役立たずの「相手」に育ててしまったりすることになるのです。
 どのような人間関係を創ることと、「わたし」と「相手」を産み育てていることと関係していると考えることは相互の関連があり、人間関係を探求することと一人ひとりのありようを絶えず関連させながら探求することとが大切なのです。より相互依存的な人間関係が創ることをめざすことは、よりイキイキした肯定的な「わたし」「相手」を生みだすことであり、また一人ひとりの中で生まれるプロセス(行動、思考、感情)を大切にすることにより人間関係により信頼の風土が生まれていくと考えています。

 人間関係は、人間が成長する場、共育の場すなわち、共に育ち合う場といえます。

 私たちは、人間関係の中でどのような人間に生まれ、どんな存在になりたいと考えているのでしょうか。「人間は、誰も身近な人に愛され、尊敬され、認められたい」といった欲求をもっているといわれます。この欲求は人間関係の基本的な欲求といえます。この欲求を人間関係の中で充分満たすことによって、もっと他者から賞賛されたいと思う欲求が生起し、さらに自分の潜在力を発揮し成長したいという成長欲求(自己実現の欲求)が生まれるといった欲求の階層性を示したマズローの欲求階層モデルがあります。


 私たちは、いかに人間関係が満たされた関係になるかによって,学びの意欲,成長の意欲は大きく影響を受けるのです。相互に信頼し合う関係を創り出すことによって、学習の場が学習者にとって意欲的で主体的な場になっていくと考えられます。(つづく)